2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610386
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
根津 由喜夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (50202247)
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Keywords | ビザンツ / 地域社会 / 民族問題 |
Research Abstract |
本年度は当初の計画に基づき、12世紀のバルカン半島,とりわけマケドニア地域の民族共生の問題を、主としてアトス山修道院文書の分析を通じて解明を試みた.この時期、この地域にはトルコ人の小アジア侵攻の結果、故郷を追われたグルジア・アルメニア系の貴族やアナトリア出身の家門が皇帝によって所領を給付されて定着してゆく.そうした過程で被らは、既に当地において大土地所有者としての地位を固めつつあったアトス山の修道院と所領をめぐって様々な帆轢や紛争を巻きおこした.ここでは、今日、修道院に残されているこれらの係争事件の関連文書を読み解く中で、これらの新来の勢力がどのように現地社会のなかに定着していったのか、そしてそれらの紛争はいかにして解決が図られたのかが考察された. その結果、現地での紛争解決システムは、現地社会の実質的な頂点にあった皇帝一族の成員から実務を委ねられた文官・家人層と現地名望家層の提携・協力の上に築かれていたこと、こうした状況の中で家人層の地域への定着傾向が認められることが確認された.また、文書に登場する在地の名望家層にしても、その出自を詳細に調べてみると、実際には周辺地域の出身者ばかりではなく、首都の文官層や小アジア、エーゲ海島嶼部の出身者、南イタリアからの亡命者など、多彩な要素が含まれていたことも、あわせて明らかになった. 今回の研究には、昨年夏に実施したギリシア、マケドニア共和国(旧ユーゴ)方面への調査旅行から得られた知見も充分に活用されている.とりわけ、アテネで収集された多くの文献や、テッサロニケの町とマケドニア各地で多くのビザンツ時代の史蹟を実地に調査できたことは、修道院文書に記された内容を正確に理解する上で大きな力となったことは疑いえない.
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Research Products
(1 results)