2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610386
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
根津 由喜夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (50202247)
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Keywords | ビザンツ / 民族問題 |
Research Abstract |
今年度は、11世紀後半の小アジア社会の分析と、12世紀、西欧勢力の大規模な東地中海沿岸地域への進出期におけるビザンツ帝国の対外政策と国家構造の考察という2つの課題に関して研究を行った。 第一の課題は、トルコ人の侵入に伴って混乱をきたしていたビザンツ領小アジアにおいて、現地住民がこうした危機にどう対処し、新たな隣人であるトルコ人たちとどう折り合いをつけて共生の道を探ったかについて解明することである。この時期、小アジア各地で勃発した反乱の記録を読んでゆくと、地域の住民たちは、もはや充分な保護の手を差し伸べられない中央政府に見切りをつけ、各地に割拠する反乱者やトルコ人の首領とすら話をつけて自らの身体と財産を守るために奔走していた姿が浮かび上がってくる。 第二の課題は、前述のごとく、西欧勢力の大量進出に直面したビザンツ帝国が、自らの生き残りをかけてこれに対処した過程を跡付け、その特質を解明することにあった。考察の結果、この時期のビザンツの支配システムを特徴付ける、皇帝を擬制的な父親とし、臣下を擬制的な息子として相互に保護と忠誠を保証しあう擬制的家族原理に基づいた統治構造が、帝国内に居住する西欧人と帝国周辺の臣属国君主の双方に適用され、それが当時の帝国国内外の秩序を律していたことが明らかになった。しかし、その一方で君主相互の人的関係に依存したこうしたシステムは、ビザンツに強力な皇帝が欠けた場合には、周辺諸国に介入の口実を与えるものであり、それが12世紀末の帝国の急激な衰亡を招くことにもなったのである。
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Research Products
(1 results)