2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610388
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学研究科, 助教授 (70252202)
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Keywords | ロドス / アンフォラ / プトレマイオス朝 / ヘレニズム / 採石場 / 東地中海 / 交易 / アコリス |
Research Abstract |
本年度は、中エジプト・アコリス遺跡から出土したロドス産アンフォラの分析と並行して、これを大きな歴史的文脈に位置づけるために、アンフォラをめぐる諸問題の背景となるヘレニズム時代ロドスの歴史的展開についても、考古学的データと文献史料にもとづく考察を行った。その結果、アコリスをはじめとするエジプトの諸遺跡からの史料が、ロドスが自治を喪失し東地中海交易の中心がデロス島に移ったとされる前2世紀後半にも、なおロドスが活発な穀物交易を展開していたことの決定的な証拠となることが確認された。アコリスで認められるパタンがアレクサンドリアのそれと一致することは、従来あまり注目されることのなかったプトレマイオス朝エジプトにおける都市=農村関係、すなわち首都とコーラとの密接な経済関係を浮き彫りにするものでもある。アコリス遺跡の現地調査では、2001年度に発見されていた石切場の碑文を分析し、これが採石場での活動に何らかのかかわりのあった女性の名である可能性を提示した。この女性の名がサラピス神に由来することも、首都で創始された信仰がコーラに浸透していく過程を窺わせる点で興味深い。ロドス産アンフォラの工房(fabricant)のなかにも、同じように女性の名が見られることは、ヘレニズム時代におけるジェンダーの研究にも、貴重な史料を提供することになると考えられる。アコリスに搬入されたロドス産アンフォラは、アコリスの採石場からおそらくアレクサンドリアに向けて搬出された石材の見返りだったと考えられるため、採石場をめぐる問題はアンフォラの問題と密接にリンクしている。採石場をめぐる社会状況は、パピルス文書にも散見されるところであるが、これを考古学的に検討するための手がかりが得られたことの価値は大きい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 周藤, 芳幸: "ワイン色の海を越えて"西アジア考古学. 3. 33-44 (2002)
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[Publications] 周藤, 芳幸: "ミケーネ社会の経済構造"西洋史研究. 31. 159-169 (2002)
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[Publications] SUTO, YOSHIYUKI: "Inscriptions"Akoris : Preliminary Report 2001. 15-18 (2002)
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[Publications] 周藤, 芳幸: "重層する文明の古都、イスタンブール"FUJITSU 飛翔. 45. 28-31 (2002)
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[Publications] 周藤, 芳幸: "ギリシアのなかのギリシア、アテネ"FUJITSU 飛翔. 46. 32-35 (2002)
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[Publications] 周藤, 芳幸: "世界の発掘調査 ギリシア"文化遺産の世界. 8. 15-18 (2003)
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[Publications] 周藤, 芳幸(偏): "世界歴史の旅 ギリシア"山川出版社. 198 (2003)