2000 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ社会におけるブリティッシュネスの変容-多民族化とアメリカ化の中で-
Project/Area Number |
12610394
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
細川 道久 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (20209240)
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Keywords | 帝国記念日 / イギリス帝国 / カナダ / カナダ史 / 国民統合 / 帝国意識 / 多民族社会 / ブリティッシュネス |
Research Abstract |
本年度の研究はつぎの2点に集約できる。まず第1に、既存の研究文献(とくに政治外交史)の整理を行った。19世紀末から20世紀後半にかけてのカナダ社会に対して〈アメリカ化と多民族化の進行=イギリス帝国離れ〉という図式を当てはめ、同社会が両大戦間期にイギリス帝国離れが加速化し、イギリス帝国圏からアメリカ合衆国圏へとシフトしていったとする研究が多いことを確認した。これに対して小生は、両大戦間期にアメリカ合衆国の影響が増大しており、カナダを北米国家として位置づける傾向が強くなったのは否定できないものの、とくに社会・文化の側面では、カナダとイギリス帝国・コモンウェルスとの繋がりはたやすく断たれたわけではなかったのではないか、との見解を抱いており、従来の研究と小生の見解との異同を考察した。 つづいて第2に、「帝国記念日」自体の祝典内容の推移について、オンタリオ州を中心に考察を試みた。「帝国記念日」において説かれた「国民」の理想像や「国家」の青写真がどのように変化していったのか、そして、イギリス帝国・コモンウェルスに対する貢献やイギリス帝国・コモンウェルスへの帰属意識の重要性を説いていたレトリックの内容が、時代を経るにつれてどのように変容していったのか、かつまた、人びとがいかなる反応を示し、先のレトリックの有効性がどのように変容していったのかについて、オンタリオ州教育省が発行した教師向けのブックレット、および、「帝国記念日」に関する新聞記事についても分析検討した。 次年度は、上記の分析をさらに進めるとともに、「帝国記念日」に関った組織の活動についても分析することにしたい。
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