2000 Fiscal Year Annual Research Report
古代メソポタミアにおける神・人間のユミュニケーション
Project/Area Number |
12610398
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中田 一郎 中央大学, 文学部, 教授 (50119541)
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Keywords | メソポタミア / 占い / バビロニア / 預言 / 夢 |
Research Abstract |
本研究は、(1)比較的史料の多い前2千年紀に重点を置いて、神・人間のコミュニケーション・チャネルである各種の占い、夢、予言などについての言及例を文書史料から収集し、(2)各種コミュニケーション・チャネルの比較をすると同時に、(3)果たして、人間は神々の恣意の奴隷であることに満足していたのかについても、いわゆる知恵文学などに照らして検討し、(4)古代メソポタミア人のメンタリティを解明することを目的とする。 本年度は、3年計画の研究の初年度で、資料収集などが中心となったが、その研究成果の一部に関して、2000年8月30-31日に京都で開催されたシュメール研究会で「マリ出土の占師のためのプロトコル」と題して口頭報告を行った。上記「占師のためのプロトコル」は、マリ王国のジムリ・リム王(ハンムラビと同時代)が、臣下の占師達にたいしていくつかの事項を守るよう義務つけた文書で、極めて珍しい史料である。 この文書によると、王から下問のあった占うべき事柄(例:某国と戦争すべきかどうか)とその占い結果を第三者に教えないこと(守秘義務)、同僚の占師から得た秘密情報やたまたま同僚の行う占いに陪席して目にした諸兆をすべて王に報告すべきこと(通報義務)、王に敵対的な人物の依頼を受けて占いを行わないこと(敵対者のための占い禁止)など、内蔵占いであれ、鳥占いであれ、奇形児占いであれ、天体占いであれ、夢占いであれ、あらゆるタイプの占いに関連して占師が守るべき事柄を王が詳細に規定していたことがわかる。
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