2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610406
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
姫岡 とし子 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (80206581)
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Keywords | 労働 / ジェンダー / ジェンダーの歴史学 / ドイツ / 社会保険 / 労働者 |
Research Abstract |
本年度は「女性史」および「社会経済史とジェンダー」の過去20年間の成果と課題のまとめが研究の中心となった。女性の可視化、女性を歴史の担い手・主体とし位置づける試みから出発し、「女は家庭、男は仕事」という性別股割分担を普及させた近代的家父長制の抑圧的な側面に注目し、近代化の徹底=女性解放という従来の図式に異議を唱えた新しい女性史は、数多くの成果を生んだのち、90年代以降は次第に「ジェンダーの歴史学」へと転換を遂げている。杜会経済史の分野でも、杜会構造中心の見方に加えて人びとの認識に焦点を当てる「ジェンダーの歴史学」的な方法論が近年、優勢を占めるようになってきている。「ジェンダーの歴史学」は、<女><男>を所与の存在とみなすのではなく、歴史過程のなかで権力による差異化によってヒエラルヒー的に構築されたとものとみなしている。そして近代の社会秩序はこの差異化を基盤として成り立っている。したがって「ジェンダーの歴史学」の課題は、差異化の過程を探究し、それがどのような秩序形成につながっていったのかを解読することにある。 私が現在研究中の「労働と労働者のジェンダー化」もこの方法論に導かれており、現在は19世紀末ドイツで法制化された健康・労災・廃疾・年金という社会保険を中心に、そこセジェンダーがどう扱われたのかを考察している。共済保険の類は以前にも存在したが、就業者全員の強制加入方式はこれが最初であり、労働や労働者を定義する規範的な力をもった。すなわち「就業労働」のみが「労働」と定義され、ジェンダーに関しては性別役割分担を前提として制度化されたのである。
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