2001 Fiscal Year Annual Research Report
古代アテネ民主制は衆愚政治であったのか 古代と近代からの考察
Project/Area Number |
12610407
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
堀井 健一 長崎大学, 教育学部, 助教授 (20190233)
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Keywords | 民主主義 / アテネ / 近代 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画は、当初、昨年度に引き続いて古典期アテネ民主制と建国期の米国、近代英国であり、アメリカ建国者たちや英国の歴史家の諸著作を吟味して、その中で古代アテネ民主制がどのような形で理解されているかを考察することであった。 本年度は、主として英国の古代史家の諸著作を吟味することができた。具体的には、J.ギリーズの『古代ギリシアの歴史』とW.ミトフォードの『古代ギリシア史』の18-19世紀の2大大著である。それらの古代史家の諸著作を古代人の歴史記録であるトゥキュディデス、アリストファネスの喜劇集、プルタルコスの『対比列伝』、プラトンやアリストテレスの政治・哲学関係書に見られるアテネ民主制に関する諸記述と照らし合わせながら、じっくりと吟味することができた。 研究の当初は、近代の古代史家がアテネ民主制を描く際に、プラトンやアリストテレスによっていかに「アテネ民主制=衆愚政治」観が伝えられたかを知ることができるのではないかと見通しを立てていた。だが、前5世紀のアテネ人政治家のクレオンを題材にして探求したところ、近代の古代史家が影響を受けた古代史料はプラトンではなくむしろアリストファネスの喜劇作品であることが知見できたと思われる。このように同じ古代の事象を扱っていても、それを伝える古代史料にいかなるものがあるかによって近代人の執筆が影響を受けることが分かったと言えるかもしれない。以上の知見を加味して、学術雑誌にその研究成果を報告したし、今後も報告を続けるつもりである。
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Research Products
(1 results)