2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610423
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
小池 伸彦 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (90205302)
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Keywords | 西三川砂金山 / 対馬銀山 / 古代 / 産金 / 産銀 / 銀山 / 鉱滓 |
Research Abstract |
本年度は主として、砂金産地である新潟県佐渡郡真野町西三川、輝安鉱産地である愛媛県西条市市之川、産銀地である長崎県下県郡厳原町床谷・樫根での現地踏査および当該市町教育委員会等からの情報収集、ならびに山口県美祢郡美東町長登銅山跡・平原第II遺跡出土の古代鉛製・精錬関連遺物等の調査を実施した。その結果、西三川では西三川川河口周辺に古代の産金関連遺跡の存在を想定することが可能であることがわかり、床谷では鉱滓の他に古代に遡る須恵器片の散布を確認した。西三川では従来、主として砂金採掘地点の特定に注意が注がれ、西三川川上流の旧笹川十八枚村や西三川川下流の医王寺付近に採掘地点が想定されてきたが、踏査の結果、古代の採掘地点を考古学的に検証する資料を得ることはかなり困難であり、むしろ河口に近接する西三川小学校周辺や田切須地区において古代の須恵器片が多数出土する(佐渡博物館長山本仁氏の御教示による)ことからすれば、この地域に、採掘地ではないが古代産金関連遺跡の存在する可能性があるといえ、考古学的にはこの地域を重視する必要があることが明かとなった。床谷は近世期の銀山鶴野町に含まれ、一帯に鉱滓が散布するところから従来17世紀後半以降の吹屋があると目されてきた地区であるが、今回新たに古代に遡る須恵器片が散布することが確認できた。これは小片のため器種を特定できないが蓋ないし鉢とみられるもので、これにより床谷地区には古代に遡る遺構の存在する可能性があることが明らかになり、従来、古代対馬銀山の所在は樫根地区に想定されていたが、今後は床谷地区も含むより広い地域を視野に入れた検討が必要になろう。なお、今回、樫根の銀山神社付近において炉壁片ないし鉱滓片かとみられるものの散布を確認したが、現在のところその断片の蛍光X線分析等を継続中であり、その詳細を明らかになし得ていない。
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