2000 Fiscal Year Annual Research Report
日本漢文資料としての聖教類の基礎的研究-平安時代書写文献を中心として-
Project/Area Number |
12610431
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山本 真吾 三重大学, 人文学部, 助教授 (70210531)
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Keywords | 日本漢文 / 聖教 / 変体漢文 / 古記録 / 表白 / 勧修寺法務寛信 / 次第 / 日記 |
Research Abstract |
日本漢文の語学的研究は、これまで俗家の著述に著しく偏っており、史書である『吾妻鑑』、日記の『御堂関白記』その他古文書などといった文献を専ら対象として、寺僧の著述を黙殺してきた経緯があった。平安時代の文献に限定しても、当時生産された日本漢文の全体像を眺める時、これは甚だ均衡を欠いているといわなければならず、それは当時の訓点資料の伝存状況からも明らかである。 本研究は、これを反省し、まず、平安時代に限定して、寺僧の手になる聖教類に注目し、古寺院経蔵の実地調査等を行って、その基礎を成すべく漢文で書かれた聖教類の範疇化とその標本(文献)の収集を行った。 具体的には、高山寺、仁和寺、真福寺等の古経蔵目録を収集して、その部立てに注目し、聖教がいかなるジャンル(「次第」「日記」「表白」等)により成り立っているかを調査してその範疇化を進めた。加えて、日本史研究の近年の動向の一つに、これら聖教に注目する有益な業績が発表されているので、これらの研究論文の収集も行った。 次いで聖教類の各ジャンルの中から標準的な文献を選定すべく、高山寺、仁和寺、講御堂寺、石山寺、東大寺図書館等に赴いて原本調査を実施し、その中のいくつかについてこれをパソコンに画像として取り込み蓄積する作業も行った。 本年度の知見として、上記の調査寺院の経蔵文献を概観するに、平安時代の寺僧の言語活動を多角的に把握し日本漢文の位置を考究する上では、真言宗の勧修寺法務寛信の著述がその標準的サンプルとして有効であるとの見通しを得ることができた。寛信は、藤原為房息で、真言宗勧修寺流の祖であって、多種類かつ豊富な漢文の述作を草しており、書写年代も古く保存状態も概ね良好な好資料が多く伝存していることが判明した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山本真吾: "平救阿闍梨伝追考"三重大学日本語学文学. 11. 1-10 (2000)
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[Publications] 山本真吾: "奈良国立博物館蔵『雑筆集』五巻と高山寺本表白集"鎌倉時代語研究. 23. 512-544 (2000)
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[Publications] 山本真吾: "石山寺資料叢書第一期『聖教篇第二』"法蔵館. 506 (2000)