2003 Fiscal Year Annual Research Report
交易史から見た上代文学と平安文学の諸相(万葉集から源氏物語まで)
Project/Area Number |
12610444
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Research Institution | TOKYO GAKUGEI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
河添 房江 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80187616)
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Keywords | 唐物 / 交易史 / 万葉集 / 源氏物語 / メディア / 越州窯陶磁器 / 渤海国 / 大宰府 |
Research Abstract |
平成15年度は、同年に刊行された『奈良平安期の日本とアジア』『対外関係史研究のあゆみ』(吉川弘文館)など唐物・交易史関係の図書や論文のコピーをひき続き収集し、データ分析に際しての参照資料とした。 調査については、平成12年度の大宰府、平成13年度の北京、平成14年度の京都に続き、11月に韓国のソウルへの調査旅行をした。『万葉集』における「高麗帯」、平安文学における「高麗紙」や「高麗錦」などのルーツをたどるべく調べて、さらに高麗青磁について調査し、越州窯の陶磁器と比較することで、その理解を深めた。 また交易品である唐物を人と人をつなぐメディアと捉えて、梅枝巻をはじめ、『源氏物語』第一部の物語の再検討を試み、その成果を報告書の前半に収載した。なお、その一部は、「梅枝巻と唐物」(河添編『源氏物語の鑑賞と基礎知識 梅枝・藤裏葉』至文堂)と「天徳内裏歌合から読み解く『源氏物語』」(「日本文学」2004年5月号に掲載予定)にまとめた。 さらに平成14年度にほぼ収集し終わった平安文学関係の唐物(紙・香・布・顔料・書籍・陶器・瑠璃・珍獣など)や交易史(地名を含む)の用例をデータベースに整理し、それに関しての文献目録も作成した。次に研究協力者である院生や研究生と十数回の研究会をもち、データの検討を行った。その結果は、研究実績報告書の後半に収載した。また研究代表者の四年間の調査と研究の成果を踏まえて、それを総括する形で、研究実績報告書の前半はまとめた。 今後は断片的にデータを収集しただけで、検討を加えることができなかった『菅家文草』をはじめとする平安漢詩集や、『枕草子』『紫式部日記』、『日本霊異記』『今昔物語集』について、データベースの作成、その分析、さらに関連文献目録の作成を進めたい。また報告書でまとめた内容についても、中間報告の部分もあるので、さらに精査し検討を加えて、通史的な分析を経て、総括的な学術図書の刊行をめざしたい。
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