2001 Fiscal Year Annual Research Report
『萬葉集』から中古の和歌文学における中国文学受容史の研究
Project/Area Number |
12610447
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大谷 雅夫 京都大学, 文学研究科, 助教授 (80152172)
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Keywords | 『萬葉集』 / 『新古今和歌集』 / 『本朝麗藻』 / 『狭衣物語』 / 中国文学 / 受容 / 比較文学 / 『源氏物語』 |
Research Abstract |
和歌文学がいかに中国文学を受容したかという問題について、研究を継続してしいる。 今年度「道をうづむ花」という論題で発表した論文は、『狭衣物語』の主人公狭衣大将が口ずさむ「かうりたまかへつてあとなるはふかし」という謎めいた言葉が、じつは『本朝麗藻』の「行履珠帰跡半深」であったことを明らかにした。さらに、その「跡半深」は落花によって道が埋められるさまを詠う詩句であること、そしてその趣向は和歌の世界にも共通することを述べて、『新古今集』の名歌「吉野山花のふるさとあとたえて」や「桜色の庭の春風あともなし」の「あとたえて」「あともなし」も、花によって道が埋められたことの表現であるという新たな読みを提示した。 また、『源氏物語』の光源氏の歌「恋わびてなく音にまがふ浦波は思ふかたより風や吹くらむ」の「なく音」が、源氏の泣く声を意味するのか、または都人の泣く声か、従来、解釈が定まらなかった問題について、最近作の「聞き紛う音」は、それを水音を「咽ぶ」と捉える漢詩表現、特には楽府の「隴頭水」に関係するものであると考えて、流謫の身の光源氏が、隴水の咽ぶ水音に声を合わせて泣いた兵士と同じように、須磨の浦波の音を自らの泣く声のように聞いたとする解釈を定めた。また『紫式部日記』冒頭の難読部分も、詩の表現の受容を考えることによって新たに読み解いた。
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Research Products
(2 results)