2000 Fiscal Year Annual Research Report
室町末・江戸初期の近衛家の文学活動の研究-過渡期における制度と文学-
Project/Area Number |
12610449
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大谷 俊太 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60185296)
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Keywords | 室町時代 / 江戸時代 / 堂上文学 / 和歌 / 狂歌 / 連歌 / 近衛 / 公家 |
Research Abstract |
本年度は、近衛家四代のうち、前二代の前久・信尹について、重点的に調査・研究を行った。計十回の陽明文庫での調査等において、まず、同文庫所蔵関連資料の概容を把握することに努めた。その結果、前久・信尹の詠草類は約百七十点が陽明文庫に伝えられていることがわかり、そのほとんどを、順次閲覧・調査・収集した。また、聞書類についても、信尋・尚嗣の手になるものも含めて約五十点を順次閲覧・調査・収集した。さらに、前久・信尹の書状類は約九百点が陽明文庫に伝わるが、例えば詠草に付されて交わされたものなど文学関連記事を含むものも少なくなく、これも調査対象に加えることとした。但、その調査については大半が来年度以降の仕事となる。現在は、上記収集資料の解読・整理を順次続けており、各資料のデータ化を行いつつ、詠草・聞書・書状それぞれの資料の性格に配慮したフォーマットの検討を行っている。 上記の調査の過程で、近衛家四代の人物像や文学活動の特徴を端的に示していると思われる興味深い新出の資料をいくつか見出すことができた。例えば『龍山公御詠草』(59133)は前久の十五首狂歌である。前書きより、おそらくは信尹の百首狂歌に応じて詠まれたものと考えられるが、当代文学における雅と俗の問題の考察に有益な一次資料である。また、信尹の筆になる『随筆』(59031)と仮称される一冊は、『醒睡笑』に約二十年先行する、笑話の書留であり、『犬枕』などを生んだ近衛家サロンの実態を伝える貴重な資料である。 なお、聞書類の中からは、以前より考察を続けている『百人一首』講釈の関連資料の一環として、信尋の聞書を紹介し、考察を加えた(研究発表・雑誌論文)。
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