2001 Fiscal Year Annual Research Report
室町末・江戸初期の近衛家の文学活動の研究--過渡期における制度と文学--
Project/Area Number |
12610449
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大谷 俊太 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60185296)
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Keywords | 室町時代 / 江戸時代 / 堂上文学 / 和歌 / 狂歌 / 連歌 / 近衞 / 公家 |
Research Abstract |
本年度は、近衞家四代のうち、中の二代の信尹・信尋について、重点的に調査・研究を行った。陽明文庫での調査をおよび前年度収集資料の読解等において、詠草類とともに、詠草に付随する書状・書状案・覚書等についても目を配り、詠草と関連づけることで、和歌が詠まれた現場の実態をより立体的に把握することに努めた。また、和歌に限らず、伊勢物語・源氏物語・日本紀あるいは漢籍等の講釈の聞書についても、閲覧・調査・収集を行った。これにより、近衞家四代の教養・知識の在り方を知ることができ、また和歌の読解にも役立てることが可能であるが、資料が断片的で講釈者やその日時の特定が難しいものも多く、その整理は次年度に持ち越す部分が大きい。 本年度後半は内地研究員として京都大学において研修を行ったが、その過程での京都大学附属図書館所蔵の近衞家文書・中院文庫・平松文庫・谷村文庫・総合博物館所蔵の中院家文書・壬生家文書の試料の閲覧・調査を行った。このうち中院文庫・中院家文書では、信尋・尚嗣の和歌の師匠である中院通村に関わる資料や、信尋の実兄であり近衞家との繋がりの極めて強い後水尾院自筆の古今伝受関係資料などを見出し、当代文壇における近衞家の位置づけに関して知見を得た。また、近衞家に出入した連歌師の家、猪苗代家伝来の資料を伝える谷村文庫の調査を通じて、近衞流の古今伝授の実態をある程度把握することが可能となった。 また、後水尾院周辺の資料として、旧高松宮家蔵禁裏本を国文学研究資料館所蔵の写真版によって調査し、現在の所蔵先の国立歴史民俗博物館を通じて一部写真の収集を行った。 現在は、上記収集資料の解読・整理を行いつつある。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 大谷 俊太: "面白がらするは面白からず--室町・江戸の和歌における作為と自然--"文学(隔月刊). 3巻2号(予定). (2002)
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[Publications] 大谷 俊太: "富士を伊達に詠むこと--富士詠の近世--"富士山と日本人(青弓社). (予定). (2002)
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[Publications] 大谷 俊太: "テニハ伝授と余情--つつ留り・かな留りをめぐって--"テニハ秘伝の研究(勉誠出版). (予定). (2002)