2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610455
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
日向 一雅 明治大学, 文学部, 教授 (90079426)
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Keywords | 源氏物語 / 準拠 / 典拠 / 出典 / 河海抄 / 花鳥余情 / 細流抄 / 岷江入楚 |
Research Abstract |
平成12年度は桐壺巻、帚木巻の準拠と典拠の調査と整理、検討を行った。両巻は源氏物語の冒頭に位置する巻であり、準拠、典拠のきわめて多い巻である。河海抄、花鳥余情、細流抄、岷江入楚の指摘を中心にして、中世近世のその他の注釈書類をも適宜利用して、必要と見なした指摘は取り入れるようにした。但し諸注釈書類の指摘する準拠、典拠のすべてを網羅することを目的とはしていないので、河海抄から岷江入楚までの指摘を目安にしている。また今日の研究で作品の読解や解釈において新しくさまざまな史実との関係の指摘がなされているし、典拠や出典についての検討も行われている。それらについての調査と整理も進めている。ただ何をどこまで準拠や典拠の範囲として認定するか、認定できるのかという問題は厄介である。 10月発表の論文「源氏物語の貴族生活の美学・理念」(『源氏物語研究集成』第12巻、風間書房)は、延喜天暦期また一条朝の宮廷文化に準拠するとともに、儒教的理想主義を典拠に仰ぐ源氏物語の方法と特色を検討し考えてみたものである。中世源氏学の特色である準拠説や典拠論が源氏物語の読解、解釈のみならず、作品論にとってもきわめて有効な観点であり、こうした観点を無視しては源氏物語を正しく理解することはできないと考える。準拠や典拠の問題は源氏物語をその成立した時代とともに、歴史的背景をしっかりと踏まえて理解する上で欠かせないのである。
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