2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610458
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
和田 道子 中京大学, 教養部, 教授 (70183126)
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Keywords | 近世前期 / 歌壇 / 霊元院 |
Research Abstract |
本年度の研究は、宮内庁書陵部蔵の二十八冊よりなる叢書『先代御便覧』を中心にして行った。同資料の重要性は古くより注目され、昭和三十六年には井上宗雄氏をはじめとする三名により目録も作成された。しかしながら、大部の書であり、成立などに不明な点もあるために、その後四十年近く放置されてきた。本年度は、これまでの成果を基にして、『先代御便覧』の成立・構成などを明らかにし、近世前期宮廷歌壇に位置づけるため、巻4と巻27とを中心にして研究を進めた。 巻27所収の「毛利甲州被尋条々」には、題名の通り、甲州守毛利綱元が日野弘資に尋ねた歌学上の質問が書かれており、写本六十丁、宮内庁書陵部所蔵『先代御便覧』巻二七に収められている。日野弘資には現在『日野殿三部抄』と総称される、弘資述、田村建顕(坂上宗永)・毛利綱元筆記の和歌聞書が残されているが、その三部のうちの、綱元にあてた二部の成立に深く関わる歌学資料であると思われる。これまで紹介された『日野殿三部抄』は、いずれも問答の答のみを収め、問の部分を欠いているが、問と答が揃って初めて歌学伝受のありようが理解できるということはいうまでもない。『日野殿三部抄』との関係の詳細は次年度以降に譲ることにして、まず、この問の部分を翻刻・紹介した。 上記翻刻を公表することにより、これまで未紹介の『日野殿三部抄』についての情報を得ることが出来た。次年度は、こうした新出資料にも目を配りながら、研究を継続したい。
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Research Products
(1 results)