2002 Fiscal Year Annual Research Report
敦煌文書・トルファン文書・正倉院文書の比較写本学研究
Project/Area Number |
12610469
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
松尾 良樹 奈良女子大学, 文学部, 教授 (20127426)
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Keywords | 敦煌文書 / トルファン文書 / 正倉院文書 / 口語語彙 / 写本 / 字体 |
Research Abstract |
本研究は唐代に筆と墨を用いて紙に書かれた写本で、今日にまで伝わる三つのグループ-敦煌文書・トルファン文書・正倉院文書-を文字の字体およびそこに用いられる口語語彙を中心として比較・対照・分析を行ってきた。第一年度は分量が約二千点と少く、釈文・写真とも殆んど全て資料化されているトルファン文書を詳細に解読分析し、とりわけ口語語彙を抽出集成し、口語史の視点から検討を加えた。第二年度は敦煌文書のうち、文学文献に比べて研究の立遅れていた社会経済文献の集成である『敦煌社会経済真蹟釈録』に含まれる文書につき、文学・釈文・語彙の面から検討を加えたが、1冊600頁の大冊であるため、1〜3冊は検討を加えたが、4〜5冊は第三年度である平成14年度に持ち越した。『正倉院古文書影印集成』既刊14冊のうち、第一年度は1〜3冊。第2年度は4〜6冊につき、『大日本古文書』の釈文に検討を終えたが、今年度は7〜14冊につき検討を進めた。三大文書群に対して比較写本学的検討を加えたことにより、敦煌・トルファン・奈良と遠く隔たった、シルクロードの西端と東端で書かれたにも拘わらず、字体・異体字をふくめ、三大写本群の共通性は極めて大きいことが明らかになった。唐の都長安の写本文化の規範は西端の敦煌・トルファンにも及び、東端の奈良にも及んでおり、唐代東アジアの漢字文化圏は強く結ばれていたことも明らかになった。日本の正倉院文書を東アジアの視点の中で再検討することの重要性も明らかになった。
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