2000 Fiscal Year Annual Research Report
一般言語獲得理論に基づく獲得資料調査及び文法的形態素の発達に関する理論的研究
Project/Area Number |
12610483
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
鈴木 猛 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00187741)
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Keywords | 一般言語獲得理論 / 文法的形態素 / 「の」 / が / の交替 / 使役構文 / 受動構文 / 授受構文 / ゼロ使役 |
Research Abstract |
家族から調査協力を得て現在日本語を習得中のA児を対象に、日本語獲得に関する発話データベースを作成するための観察調査を毎週〜隔週程度のペースで行った(2歳直前頃から観察開始、現在2歳9ヶ月;観察継続中)。データは文字、音声、および映像の形で蓄積している。音声・映像データは次年度以降引き続き編集、出来る限り文字データ化する予定である。 観察中にややまとまった形で収集・整理できた要素に所有他を表す「の」がある。その発達過程を観察し、名詞による名詞修飾の発達過程、特に、「の」が導入される過程とその周辺を概観。いわゆる「が/の交替」による主格の「の」は「が」より早い段階で習得され、「が」から派生させるのは適切ではないこと、また、主格の「の」は大人よりも広範に見られることについて論文発表を行った。同論文では、日本語の習得研究では軽視されがちな理論的考察をし、A児の持つ文法に関する仮説を提案をした。 本研究で特に注目したい構文として使役・受動・授受構文がある。使役に該当すると思われる構文は期間後半に頻繁に観察され始めた。例えば、「くつはいて」という発話が「靴をはかせて」という意味で用いられている。興味深いことに、使役の形態素「させ」は全く使われていない。さらに、「Aにくつはいて」(=Aに靴をはかせて)のように「に格」名詞句が現れる例も数多くある。ただし、このゼロ使役とでも呼べる形は、依頼文でしか現れていないようである(現在データの整理中)。 授受構文「-してあげる」も現れ始めた。受動構文は散見されるものの、不安定のようである。大人の使う受動構文の「に格」名詞句が行為者を表すので、受け身以外のところで「が格」の代わりに行為者を表すものとして「に格」を用いるようになった。受動の形態素「られ」は未習得で無視されているようである。来年度以降継続調査していく。
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Research Products
(1 results)