2002 Fiscal Year Annual Research Report
一般言語獲得理論に基づく獲得資料調査及び文法的形態素の発達に関する理論的研究
Project/Area Number |
12610483
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
鈴木 猛 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00187741)
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Keywords | 文法獲得 / 使役 / 授受表現 / 「させ」 / 「あげる」 / 「もらう」 |
Research Abstract |
前々年度、前年度から引き続き、A児を対象に日本語文法獲得に関する観察調査を行った(現在4歳9ヶ月;観察継続中)。 本年度はさまざまな構文が飛躍的な発展を示し、大人の文法とそれほど大きな差はなくなってきた。そのような中でも、使役、授受表現などには規則的な「間違い」が多々見られた。使役に関しては、昨年度に観察されたような依頼の文脈に限られる時期を脱し、それ以外の文脈でも頻繁に現れるようになった。形態的には、非使役形で使役を表すようなことはなくなった。それどころか、大人なら語彙的使役を使う場合でも、統語的生産的使役「させ」を使う場合が多く観察された(「見せる」の代わりに「見させる」、「消す」の代わりに「消させる」など)。この発達過程はよく知られているパターンで、A児もそれに従っていることになる。 授受表現に関しては、最初期から見られた不安定さがいまだに残っている。つまり、あげる・もらうの対比が依然として完全には修得されておらず、「Aにあげて」と自分で言う。「あげる・もらう」が動詞に付いて「やってあげる・もらう」などのように使われる場合にも同傾向は当てはまり、「ママがAにやってあげた」のように言うことがある。
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