2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610487
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金山 亮太 新潟大学, 人文学部, 助教授 (70224590)
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Keywords | ヴィクトリア朝演劇 / 英国民衆娯楽 |
Research Abstract |
今年度は、前回(1998年から99年)の科学研究費補助金に基づく研究の結果、より詳しい調査をする必要があることが判明した分野として「劇場装置の発達」を中心に研究を進めた。その結果、英国では19世紀半ばに劇場における演目の制約が解かれたことを受け、ロンドンでは登録されることもないような小規模なものも含め、爆発的な数の小劇場が生まれたことが明らかになった。これらの劇場の設備や舞台装置については詳しい資料が残っておらず、辛うじて入手できたロンドンのシアター・ミュージアムのマイクロフィルムを参考にしつつ、代表的な小劇場の営業様態を調査しているところである。 その一方、ヴィクトリア朝演劇のテクストを読み進めるという作業は継続して行っており、全集の3分の1以上に目を通すことができた。その結果、ミュージック・ホールと呼ばれる寄席へ足を運ぶ客が増えるにつれ、客席と舞台との距離がかなり縮まり、ここにおいても、客席からの反応に基づいて出し物の内容を微調整するという「小劇場」的手法が使われていることが明らかになった。ミュージック・ホールはむしろ寄席と歌劇の中間に属する分野であると考えていただけに、このような大衆的な運営には興味をそそられた。 今年度の研究成果としては、翻訳1点と論文1点が挙げられる。前者は、ここ数年継続している、ヴィクトリア朝の庶民生活の哀歓を記したダグラス・ジェロルドの戯文の翻訳であり、後者はミュージック・ホールの一形態とも言えるサヴォイ・オペラの代表作『ミカド』に見られる植民地主義と帝国主義の影響を考察したものとなった。
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Research Products
(1 results)