2000 Fiscal Year Annual Research Report
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12610489
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| Research Institution | Nagoya University |
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Principal Investigator |
滝川 睦 名古屋大学, 文学研究科, 助教授 (90179573)
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| Keywords | 近代初期英国 / 中傷文学 / 中傷 / 教会裁判所 / 演劇論争 |
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| Research Abstract |
今年度は、近代初期英国の民衆の心性に焦点を合わせながら教会裁判所(church courts)の訴訟記録を精査し、訴訟記録に表された中傷(slander、defamation)の諸相と、同時代の中傷文学(literature of slander)において表象される重層的な中傷概念との関連性を分析した。具体的な研究業績は以下のとおりである。
1.近代初期英国における性差によって特徴づけられた名声の概念を基軸に据えて、C.B.Watsonの研究-Shakespeare and the Renaissance Concept of Honor(1960)-で提出された、名声や中傷の概念の偏向性を指摘し、修正した。
2.L.Gowingの著Domestic Dangers:Women,Words,and Sex in Early Modern London(1996)などの歴史学の視座をとりこみ、R.H.Helmholz編Select Cases on Defamation to 1600(1985)などに収録された教会裁判所の訴訟記録から近代初期の民衆の心性に根ざした中傷概念を析出し、同時代の中傷文学に表象された中傷の観念を分析した。とくに、近代初期英国の演劇で表現される人物像は、単に「中傷」、「忍耐」などの寓意的形象ではなく、教会裁判所の記録に痕跡をとどめる、ジェンダーによって有徴化された中傷や名声の概念が刻み込まれた存在であることを明らかにした。
3.重層的な中傷の概念が、近代初期英国の中傷文学の系譜に連なる、当時の演劇論争(disputes over the theatricality)にも浸透していったプロセスを、シェイクスピア(W.Shakespeare)の『ハムレット』(Hamlet、1600年前後に制作)とT.ヘイウッド(Thomas Heywood)の『役者擁護論』(An Apology for Actors、1612年出版)に焦点を絞りながら、解明した。
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