2000 Fiscal Year Annual Research Report
初期英国演劇関係資料分析による英国ルネカンス演劇史の再構築に関する研究
Project/Area Number |
12610496
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (10123803)
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Keywords | 英国ルネサンス演劇 / 旅役者 / 浮浪者取締法 / 演劇統制 / パトロネジ / 地方巡業 / 演劇史 / 公演認可 |
Research Abstract |
初期英国演劇関係資料、研究書を収集するとともに、劇団巡業史、パトロネジ、演劇統制関係の調査を行った。本年度に刊行を予定していた論文は、「エリザベス朝演劇統制令と公演認可」と「浮浪者取締法再考」であったが、前者は予定より早く平成12年3月に出版し(『言語文化論究』11号所収)、後者は近刊の予定である("Elizabethan Players and the vagabond Acts,"Shakespeare Studies,vol.38掲載予定)。 「エリザベス朝演劇統制令と公演認可」は、枢密院令と検閲制度の演劇史的意義を考察している。枢密院はしばしば演劇統制令を発し、宮廷祝典局長は大衆演劇の事前検閲を行った。多くの演劇史家たちは、枢密院令や検閲制度が演劇活動を制限したと考えている。本稿はそのような見解に意義を申し立て、枢密院令が演劇活動を制限することは少なかったことを指摘し、また祝典局長による検閲制度は実は、演劇を制限・禁止するのではなく保護するシステムであったと論じている。 "Elizabethan Players and the Vagabond Acts"は、エリザベス朝に施行された複数の「浮浪者取締法」と旅役者との関係について次のように論じている。「浮浪者取締法」は、旅役者保護の側面を持っていた。というのも、この法律は、貴族お抱えの俳優の旅行権を保証したからである。「取締法」は、処罰対象となる役者や芸人や商人を明確に示すことによって実は、諸国を旅することを許される「合法的な」旅役者、旅芸人、旅商人その他を保護したのである。「浮浪者」の詳細な定義が条文に組込まれたのは、「取締法」の施行によって既得権を侵されてはならない人々が多く存在したことの裏返しであった。
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