2002 Fiscal Year Annual Research Report
初期英国演劇関係資料分析による英国ルネサンス演劇史の再構築に関する研究
Project/Area Number |
12610496
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (10123803)
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Keywords | 初期英国演劇 / 地方巡業 / エリザベス朝 / 大衆演劇 / 旅役者 / 検閲 / 統制 / ロンドン |
Research Abstract |
平成14年度は、初期英国演劇関係資料の収集・調査・分析を行うとともに、論文「エリザベス朝の旅役者たち」と資料集『初期英国演劇統制関係資料』を執筆した。 「エリザベス朝の旅役者たち」は、エリザベス朝の大衆劇団の地方巡業を論じたものである。ロンドンは当時最大の演劇市場であった。しかし芝居が打たれたのはロンドンだけではなかった。この時代、地方を巡業する劇団は引きも切らず、地方の市や町や村はロンドンにおとらず重要な興行地であった。従来地方巡業は疫病流行との関連で理解されることが多かったが、実は多くの劇団が疫病とはかかわりなく地方巡業をした、あるいはせざるをえなかったのである。旅回りは特殊な興行形態ではなく、通常の興行スケジュールに組み込まれていた。巡業に出ることが少なかった1590年代後半の宮内大臣一座は、そういう意味で例外的な劇団であった。 『初期英国演劇統制関係資料』は、ヘンリー八世即位年(1509年)からチャールズ一世時代末期(1649年)までの演劇検閲・統制関係関係資料をまとめて、年代順に列挙したものである。所載資料は、演劇の統制に係る議会制定法、枢密院令、国王布告、上演許可あるいは禁止に関する公文書、上演禁止請願書、上演許可願い、演劇がらみの事件や筆禍を伝える書簡や文書、役者の庇護に係る資料から成っている。資料の中心をなすのは芝居の上演に関するものであるが、戯曲その他の書籍出版の検閲・統制関係資料も一部参考資料として記載している。本資料集には、英国ルネサンス演劇の中心地ロンドンの記録だけでなく地方の関係資料も収められている。これに関しては、初期英国演劇関係資料集Records of Early English Dramaを活用した。この資料集を渉猟し、地方の市や町における上演認可・禁止等の記録を採集し、ロンドンの資料と併せて記載した。
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Research Products
(2 results)