2000 Fiscal Year Annual Research Report
文法障害の対照言語学的研究と統語計算処理の脳内アルゴリズムのモデル構築
Project/Area Number |
12610500
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤原 裕子 (萩原 裕子) 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (20172835)
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Keywords | 使役構文 / 文法障害 / 言語の認知脳科学 |
Research Abstract |
本研究は、生成文法理論で仮定されている言語の構造的概念と意味的側面の脳内基盤がいかなるものかを探るために、失語症患者を対象とした文法障害の実証研究を行うものである。本年度は、申請研究課題遂行の初年度にあたるため、次年度に本格的におこなう言語の認知脳理論の構築のための第一次資料収集を目的とした。具体的には、日本語にみられる、語彙使役文(倒す)と-サセ使役文という二種類の使役構文をもちいて、それらが「連想記憶」と「計算」のどちらの方式で処理されているのかを調べるために、健常者およびブローカ型失語症患者を対象に実験をおこなった。結果は、予測通り文法に障害のあるブローカ型失文法患者の言語実験において二種類の使役接辞の違いが乖離現象を示した。失文法患者は、穴埋め課題、選択課題、文と絵の一致テスト、新語テストのいづれにおいても、語彙使役文には良好な成績を示した一方で、-サセ使役文の成績は有意に低かった。これらの結果は、1999年にLanguage誌上でHagiwara他によって提案された「言語処理の二つの型」の仮説を支持する新たな証拠といえる。その仮説とは、言語演算処理には少なくとも2つの質的に異なった型が存在しているというもので、一つめの「規則の適用による言語演算処理」には、言語単位の大きさに関わらず、生産性が高く、規則的で、意味の透明な言語処理が関与している。つまり、音素、形態素、単語、句、文のいかなる言語単位でも、記号の表示とその変換にかんする操作がかかわる処理が行われる。二つ目の「パターン連想処理」は、直列的文法演算処理とは異なり、並列的な多重結合ネットワークによる処理方式で、連想記憶や、それに基づいたアナロジーとして機能するというものである。次年度には、これらの結果と考察を踏まえて、さらにデータの拡充と理論の構築を目指したい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hagiwara,Hiroko: "Linguistic theory and cognitive neuroscience of language"Cognitive Studies『認知科学』. 8・1. 3-7 (2001)
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[Publications] Hagiwara,Hiroko: "Causativity in the syntax of agrammatism"Brain and Cognition. (2001)
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[Publications] Sugioka,Y.Ito,T.,Hagiwara,H.: "Computation vs. memory in Japanese causative formation : Evidence from agrammatic aphasics"Cognitive Studies. 8・1. (2001)