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2000 Fiscal Year Annual Research Report

ハーディの小説における場所の空間・時間表象とジャンル・視覚文化との関係

Research Project

Project/Area Number 12610503
Research InstitutionOsaka Women's University

Principal Investigator

金子 幸男  大阪女子大学, 人文社会学部, 助教授 (60194924)

Keywordsトマス・ハーディ / 場所 / 移動 / 視覚文化 / パノラマ / 歩行 / 鉄道 / 自己形成
Research Abstract

トマス・ハーデイは、場所との調和やそこからの疎外と移動といったテーマをよく取り上げ、その情景描写には19世紀の視覚文化の影響が大きい。まず『帰郷』を取り上げ、そこに現われたサブライムな風景が当時の視覚文化を踏まえていることを論証するために、当時人気の高かった挿し絵入り新聞である、Illustrated London Newsを調べ、そこにいかにパノラマ的な挿し絵が頻繁に使われているかを検証することができた。即ち当時の人々にとって上からの俯瞰的な構図はものを見るときのひとつのパラダイムになっていることが分かる。またそれと対照的に顕微鏡的な情景は当時の博物学への関心と関係がある。その関心は専門家が手にする大部な書物のみを通じて広まったというよりは、女性や子供向けの教科書の類によって主に広まったのではないかと筆者は考えているが、この1年間では、当時の雑誌に顕微鏡に関する記事をいくつか見つけたのみで、女・子供向けの教科書を見るまでには至っていない。他方、『帰郷』以上に力を入れたのが『ジュード』であり、主人公の悲劇的移動を自己形成の問題として捉え直し、そこに「歩行の文化」と「鉄道の文化」が関与していることを見ることができた。18世紀からロマン派の時代を通過して世紀末まで、もともと歩くことは、農村の人々が共同体を形成・維持するのに役立っていたのであるが、ジュードのようにもともと家庭縁が薄くて、志が高く社会的上昇を望んでいる人間にとっては、歩くことは共同体からはなれ自分の野心を達成する人生の旅のメタファとなり、その動きを加速してアイデンティティの希薄化をもたらしてしまうのが、鉄道の文化であると理解した。そのような自己の希薄化の中でジュードの悲劇がもたらされるのである。この「ジュード論」は、5月の日本英文学会で発表後、来年度中にジュード論集の一つとして出版予定である。

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Published: 2002-04-03   Modified: 2016-04-21  

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