2000 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文化史における女性の政治的イメージの変遷の研究(18世紀末の「建国の母」から20世紀半ばの「フェミニン・システィーク」まで)
Project/Area Number |
12610505
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 大妻女子大学, 比較文化学部, 講師 (50272472)
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Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化 / 都市と健康 / ジェンダー研究 |
Research Abstract |
「アメリカ文化史における女性の政治的イメージの変遷」の研究の第一年目である今年度は、19世紀後半アメリカの神経衰弱の女性のイメージの研究を主眼とした。「神経衰弱」(neurasthenia)に関しては、19世紀後半の英米社会で神経のはやり病として流行したという事実は知られていたが、それが文化におよぼした影響についてはあまり考察されてこなかった。神経衰弱を詳述した医学的な書物としてはGeorge M Beard, American Nervousness(1881)が著名であり、この病にかかった女性を描いた文学作品としてはCharlotte Perkins Gilman,"The Yellow Wallpaper"(1892)がよく知られているが、両者が同時代の言説の中でどのように結びついていたのかに関する研究は従来あまりなされていなかった。そこで本研究ではこの病の文化的イメージを19世紀後半の新聞・雑誌の中に探ることから始めた。またGilman以外にこの病を描いた虚構作品をいくつか探すことで、より多くの資料からこの病の全体像を構築することを目指した。 病としては定義が定まらず曖昧なままにとどまったこの病の台頭には、伝統的な臨床医からダーウィニズムの洗礼をうけた新しい神経の専門医へと医学の勢力が傾いていくという時代背景があった。主として都会に住み専門職に携わる白人男性がかかる病とされる一方で、変動する世紀末社会の不安の中で階級や性差にかかわる他者のイメージを帯びることにもなる。そうしたイメージ構築には神経の著名医の抱く他者へのステレオタイプが大きく影響した。この病のイメージとその文化への広がりに関する研究成果を一つの論文にまとめた(3月発行予定)。
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