2001 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・ハーディと家族の歴史―19世紀末の「クラス」と「ジエンダー」
Project/Area Number |
12610509
|
Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
土屋 倭子 津田塾大学, 学芸学部・英文学科, 教授 (80055300)
|
Keywords | トマス・ハーディ / トマス・ハーディの小説 / Wessex Novels / エマ・ハーディ / フローレンス・ハーディ / トマス・ハーディと二人の妻たち / ヴィクトリア時代のクラスとジェンダー |
Research Abstract |
本年度の当初の目的としては夏休みはさらなる資料の蒐集を行う予定であったが、平成12年度に集めた膨大な資料もまだ読み終えていない現状と研究の全体像の見通しから、夏休暇の全てを資料を読むことと、研究の冒頭部としてすでにまとめてある「トマス・ハーディと最初の妻エマ(1)-ライオネスの出会い」に続くことになるハーディとエマの結婚から中期の代表作である『帰郷』へといたる部分をまとめることに使った。これはとりあへず、「トマス・ハーディと最初の妻(2)-結婚から『帰郷』へ」として津田塾大学紀要(2002年3月)に掲載する。この論文を書くにあたって、あらためて確信したことは、『帰郷』の'the returning native'という主題はハーディ自身のドーチェスターへの帰郷とエマとの関係を考慮しないでは論じられないということであった。そして13年度の実施計画でも述べたように、エマとの関係を歌った数々の詩の重要性も認識した。Wessexという土地柄の持つ意味にも注目しながら、新しい『帰郷』論が書けたと考えている。というのは『帰郷』については拙著『「女」という制度-トマス・ハーディの小説と女たち』(南雲堂、2000)で一章を割いて論じてはいるが、今回生まれ故郷に帰ったハーディと妻エマの関係をみながら小説を考えたとき、小説がまったく新しい様相をみせたからである。今年度、この論文に続く部分に関係するハーディの重要な書籍や資料は日本の古書店を通してほとんど入手することができたので、成果の報告までのあと1年間できるかぎり全体をまとめたいと思っている。
|