2000 Fiscal Year Annual Research Report
革命期フランスにおける「自然」概念についてのコーパス解析的研究
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12610523
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤間 啓之 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教授 (60242301)
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Keywords | ストア主義 / メスメリスム / 計量文体論 / ベクトル空間モデル / 共起 / 因子分析 / イデオロギー / カバニス |
Research Abstract |
本研究の目的は、計量文体論的な方法を用いて、近代初頭、晩期啓蒙主義の時代のフランスにおける、ストア主義とメスメリスムの、目に見えない思想的類似性を論証することである。今回は、情報検索学の基本概念であるベクトル空間モデルを計量文体論に導入し、文脈の自動抽出技法を利用することで、ジョルジュ・カバニスの『第一原因についてのF氏への手紙』と、F.-A.メスメールの『医学博士F.-A.メスメールによる、彼の発見についての論文』の、目に見えない類似性を探索した。具体的には不要語を削除した後、両テキストを、長さを規準化しつつ合併連結し、双方で最頻出するキーワード名詞77語を変数に設定、それらと一定のウィンドウ幅内で共起するすべての語をサンプルとして出現頻度をカウントした上で、バリマックス回転付の因子分析を行った。その結果、15の因子が抽出されたが、特に両テキスト全体が存している概括的・包括的な背景文脈を明らかにする因子でありながら、カバニスに1度も現れないメスメールの固有語-「磁気」-が高い因子負荷量で位置付けられているのを発見した。その結果から、メスメールの議論の独特でドグマ的、直截的な性格は、実は両者共通の関心テーマ系の中でその主調(メイントーン)を決定しており、そこで我々はメスメールのターミノロジーの孤立した珍奇さだけに迷わされてはいけない、ということがわかった。すなわち「催眠術の一種としての動物磁気」という、きわめて特殊な観念といえど、人間の身体組織をめぐる思想的考察という、当時の一般的なイデオロギーの中に自然に収まるということが判明した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hiroyuki AKAMA: "Cabanis oule crepuscule de la metaphysique"Actes du XXVII^e Congres de I'ASPLF. XXVII. 297-305 (2000)
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[Publications] 赤間啓之: "単語共起データの多変量解析により,哲学思想の潜在的類似は分析可能か?"日本認知科学会・文学と認知,コンピュータ分科学会例会資料集. 8. 1-2 (2000)
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[Publications] 赤間啓之: "文学と窓"日本認知科学会・冬のシンポジウム 資料集. 1. 34-40 (2000)
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[Publications] 三宅真紀,赤間啓之,佐藤研,中川正宣: "因子分析による共観福音書問題の解析"文理ミナジー学会コルプス情報学研究会予稿集. 1. 2 (2000)
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[Publications] 赤間啓之,三宅真紀: "文学の実装に関する試論-物語世界の登場人物,およびその固有名の,オブジェクト指向プログラシング言語による設定について"日本認知科学会・文学と認知,コンピュータ分科会テクニナル・ペーバー. 2. 122-133 (2000)