2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代フランス文学に表れた宗教と科学の相剋-Spiritismeを中心として
Project/Area Number |
12610524
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
稲垣 直樹 京都大学, 総合人間学部, 教授 (20151574)
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Keywords | 実証主義 / オーギュント・コント / カミーユ・フラマリヨン / スピリティスム / 心霊研究 / アラン・カルデック / パリ国立図書館 |
Research Abstract |
本年度の研究によって得られた新たな知見を以下に示す。 1、Camille Flammarionが生前出版したspiritisme関連等の著書約10冊(そのすべてが19世紀後半から20世紀初頭にかけての出版であるため、まずもって、これらを入手することがかなり困難であったが)を精読し、Flammarionについて、主として以下の点を明らかにした。 2、Flammarionは、Auguste Comteの実証主義が内包する相対主義に則って、spiritismeを科学研究の延長あるいは「未来の科学研究」と位置づけていた。 3、Flammarionは青年期にはAllan Kardecの「パリ心霊学会」に所属し、「心霊研究」に従事した経歴を持つ。L'Inconnu et les Problemes psychiques(1900)において痛烈なKardec判を展開し、Kardecを否定することによってKardecの影響から脱却した。 4、Flammarionのspiritisme研究の方法はつぎの二つに大別できる。すなわち、その第一はいわゆる「霊能力者」を対象とした能う限り客観的かつ厳密な実験をし、その結果の分析を行うことである。このような研究の成果は主としてLes Forces naturelles inconnues(1907)に収められている。 5、第二は「心霊現象」の何千という具体的な事例をジャーナリズムも動員して収集し、それらの分類と分析を行うことである。その成果はLa Mort et son mystere三部作Avant la mortとAutour de la mortとApres la mort、さらにはLes Maisons hanteesに結実しているが、このような方法によりFlammarionが最終的に証明しようとしたのは「魂の死後存続」であった。 6、パリでの現地調査により、Victor Hugoの「霊界通信」を記録したProces verbaux des Tables tournantes de Jerseyの記録ノートについて、先行研究が明らかにしたものに加えて、先行研究が未参照のものがパリ国立図書館に所蔵されていることを見出し、Hugoの「霊界通信」の実体がHugoの無意識に近い特殊なテキスト生成であることをHugo自筆原稿等の検証を通じてこれまで以上に明確にした。
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