2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610526
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
柏木 加代子 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (10128689)
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Keywords | フロベール / 写実主義 / 象徴主義 / 日仏文化交流 / ジャポニスム / アントワヌの「自由劇場」 / 19世紀末演劇 / ダダ・シュールレアリスム |
Research Abstract |
研究実績の概要 平成14年度は、フロベールと現代演劇との関わり合いを分析した。ラビッシュ、ジャリー、フェドー、ベケット、アルトーなどのシナリオ、舞台上演記録などの資料の分析をとおしてフロベールの影響を探った。 「小説は非人情である」を提唱したフロベール。世俗を嫌っていたフロベールは、純化された沈黙の世界、つまり『純な心』のフェリシテに象徴される音のない世界を創造しようとした。「心臓の城」のような夢想劇は、言葉に表現しつくせない世界に通じる。フロベール晩年に日本を題材にした夢想劇がパリで上演されたことと「心臓の城」上演に奇妙な相違がみられる。またフロベールの『カンディダ』が上演されたオデオン座で当時上演された日本を題材とする戯曲をフロベールが観劇していた可能性もある。1878年の万国博をみたフロベールが書簡で日本文化に興味を示したのはそれなりの理由があったのではないか。浮世絵に描かれた歌舞伎などの日本伝統芸術がヨーロッパ演劇に与えた影響、たとえば花道、回り舞台などの自由な発想が夢幻劇と通底する。ゴンクール兄弟などの研究の対象となった日本文化のフランス流出とフロベールとの接点は果たして可能なのか。こうした問題提起について次年度に結論を出したい。 本年度はフランス大使館の招聘で来日されたフロベール研究家でラ・サール大学ジャンヌ・ベム教授の日本フランス語フランス文学会講演会(6月1日於東京外国語大学)の司会を承わり、その打ち合わせをかねてベム氏とフロベールについての学術交渉の機会を得ることが出来た。氏は現在プレイヤード版の『ボヴァリー夫人』を準備されていて、フロベールの演劇性に関しての業績も多く、筆者の研究にとって有意義な体験であったことを付記する。
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Research Products
(1 results)