2002 Fiscal Year Annual Research Report
フランス・モダニズム研究―ダダ・シュルレアリスムの周辺
Project/Area Number |
12610527
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷 昌親 早稲田大学, 法学部, 教授 (90197517)
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Keywords | モダニズム / エキゾティシズム / ダダ / シュルレアリスム / 無意識 / 身体性 |
Research Abstract |
本研究を構成する5つの柱に則して、今年度の成果を以下にまとめる。 1.レーモン・ルーセル研究-『新アフリカの印象』の挿絵から出発して、ルーセルの作品におけるイメージの問題を、活人画・写真、映画と比較しつつ調べ、それが彼独特の死と再生のテーマにかかわっていた点を明らかにし、仏語の論文にまとめた(2003年中に刊行の予定)。 2.アルチュール・クラヴァン研究-これまでのアルチュール・クラヴァン研究を一冊にまとめ、『詩人とボクサー-アルチュール・クラヴァン伝』として上梓した。これにより、いままで謎に包まれてきたこのダダの先駆者に光を当て、さらに、その周辺の動きをとおして、20世紀初頭のモダニズムを照射することもできたと考えている。 3.ミシェル・レリス研究-レリスの文学活動をモダニズムとエキゾティシズムの交錯という視点からとらえ、彼の自伝的エッセーと民族学関係の著作の関係に注目し、とりわけ憑依の問題についての研究を進めている。 4.ダダ・シュルレアリスム研究-シュルレアリスムをブルトン以外の視点から見直す意味でも、ロベール・デスノスに注目し、その作家論に着手した。一方、一昨年度に分析したベンヤミンとシュルレアリスムの類似点をさらに探求し、映画などの「複製技術時代の芸術」とも関連づけて論文にまとめた。 5.20世紀文化・社会・思想研究-上記4で述べたとおり、ベンヤミンとの関係で、シュルレアリスムや映画を20世紀初頭のモダニズムの問題として論じた。一方、モダニズム以降の問題として、映画における身体性を取り上げた論文を執筆した。以後は、モダニズムとエキゾティシズムに共通する問題系としての「外の思考」を、「無意識」と「身体性」をキーワードにして、さまざまな芸術のうちに探っていく方向に発展させたい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 谷 昌親: "こわれゆく身体-映画における身体性についての覚書"文学. 第3巻・第6号. 88-100 (2002)
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[Publications] 谷 昌親: "夢と目覚めの弁証法--ベンヤミンの思想圏におけるパサージュ、シュルレアリスム、映画"ユリイカ. 第34巻・第15号. 166-177 (2002)
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[Publications] 谷 昌親: "詩人とボクサー-アルチュール・クラヴァン伝"青土社. 317 (2002)