2000 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代文学の伝統批判・形成における宗教的修辞の系譜その文体論的研究
Project/Area Number |
12610530
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
|
Keywords | 宗教 / 啓蒙 / 伝統 / 批判 / 形象 / トポス / 讃美歌 / ハーマン |
Research Abstract |
本研究の目的は「批判」と「保持・形成」に与る宗教的修辞の伝統の根の深さを、ドイツ近代文学史という歴史のスパンの中で系譜的に跡づけることである。具体的には、宗教や伝統の培ってきたイメージ・形象が、どのようなトポスを形成し、どのような文体を導くかを影響史的にたどる。 1.初年度はまず、伝統の「批判」と「保持」の両義性について、すなわち伝統の「否定・捨象」の営みが実は伝統の「保持・形成」をも胚胎しているその事情について、これまでの自分の研究を批判的に検証し、深化することから始めた。併せて、信仰や宗教的言説が広い意味での「啓蒙」を促しつつ、むしろ「批判」を質的に深めていく、その過程をまだ未取得の批評文学、ことに「宗教」と「啓蒙」を主題とする18・19世紀の文献(「理神論」「覚醒運動」関係図書など)に照らして、実証的に跡づけることに務めた。この項、J・G・ハーマンに関係する部分は、まとまりがよいので途中成果を公にすべく研究成果報告書を準備中(平成13年度に刊行予定)。 2.1の課題追求の際に、重要な鍵となる比喩形象や修辞法については、その関係と系譜を俯瞰できるよう、網羅的に跡づけることに務めた。近年CD-ROMで多く提供され始めたこの時代の文献を、コンピュータを用いて検索を行い、複数の項目の錯綜する関わりをも追求した。この項目は次年度へと継続予定である。 3.その後、こうした伝統の淵源を探るために、これまであまり日本では顧みられていない17世紀の宗教資料、特に賛美歌集を中心としつつ、説教、自伝、教義書、などの文献を購入し、その研究に入った。それらを、伝統の「批判」と「保持・形成」という主題に照らして読み解き、比喩形象を抽出しつつ、その一般の世俗的文学に与えた影響を文学史の観点から跡づける作業を行った。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 川中子義勝: "ロ短調ミサ曲の「言葉」の世界 バッハにおける「崇高」について"詩と思想. 180. 46-49 (2000)
-
[Publications] 川中子義勝: "アマーリエ・フォン・ガリツィン公爵夫人(1748-1806)"日本ゲーテ協会編「べりひてBerichte」. 41. 16-18 (2000)
-
[Publications] 川中子義勝: "(書評)磯江景孜『ハーマンの理性批判-18世紀ドイツ哲学の転換』"京都大学大学院人間・環境研究科編「人環フォーラム」. 8. 62 (2000)
-
[Publications] 川中子義勝: "聖書・呼びかける言葉「私が命のパンである」"婦人の友. 4月号. 70-73 (2001)
-
[Publications] 川中子義勝: "啓示と応答としての「うた」"東京大学大学院言語情報研究科「シリーズ言語態」(2001年4月刊行開始). 2. (2001)
-
[Publications] 川中子義勝: "散策の小径"日本基督教団出版局. 171 (2000)