2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610535
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 秀彰 九州工業大学, 工学部, 助教授 (60296944)
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Keywords | 言語規範 / 発音規範 / ドイツ語標準変種 |
Research Abstract |
言語規範の成文化について、規範主義と記述主義の観点から考察した。一般に言語規範典は多くの実証研究の結果を踏まえて作成されるため、記述主義に依拠するものと捉えられやすい。しかし、規範主義と記述主義は単に現実の言語活動を記述したものかどうかという基準だけでは区別できない。規範主義と記述主義には、方法論的ならびに目的論的視点がそれぞれ存在し、方法論的規範主義、目的論的規範主義、方法論記述主義、目的論的記述主義の4つの分類が必要になることを論説した。また、言語規範は直接的に妥当するものと岡接的に妥当するものに区分しなければならない。発音規範は間接的妥当性との関連で考察されるものである。 言語規範と言語計画との関連について、E.Haugenの言語計画過程モデルを援用しながら考察した。HaugenはH.Klossが言語計画を席次計画(社会的)と実体計画(言語的)に分類したモデルを発展させ、規範と機能にそれぞれ実体計画を席次計画の側面があるとした.このモデルにより規範の選択成文化、実行、改善の4次元からなるプロセスを提案している。この4次元は実体計画と席次計画それぞれに存在するはずであり、このモデルは改良する余地があると私は考えた。そこで実体計画,と席次計画それぞれに4次元のプロセスを組み込んだモデルを提示した。発音規範作成にあたっては、以上の理論的枠組みに立脚しながら実毎研究を行うことが必要であり、現状のように実毎研究を蓄積するばかりでは結果的に得られた多様な変異形の適切な評価が行われないまま放置されることになってしまう。例えば、実証研究で確認された多くのオーストリアやスイスの変異形は規範作成者により排除されているが、これは目的論的規範主義に依拠するものと言えよう。本研究により発音規範に関する実証研究とその理論的基盤について一つの方向性を示すことが出来たものと思う。 なお、本研究は平成14年9月のGesellschaft f□r Angewandte Linguistik大会(ケルン大学)にて口頭発表を行い、その後ドイツの学会誌に投稿したが、現時点ではまだ査読結果が出ていないため11「研究発表」は空欄にさせていただいたことをご了解いただければ幸甚である。
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