2000 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀西欧とコスモポリタンの思想と行動-ゲオルク・フォルスター研究
Project/Area Number |
12610539
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
船越 克己 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (40079108)
|
Keywords | 人種論 / ニグロ / カント / ヘルダー / 遺伝 / 世界旅行 / 理性 / 啓蒙主義 |
Research Abstract |
イギリスのクックの第2回世界周航(1772-75)に随行した博物学者としてのゲオルク・フォルスターは経験を重視する啓蒙主義者として位置づけられる。このたび、18世紀ヨーロッパのコスモポリタン的思想をはぐくんだフォルスターがフランス革命期に、マインツ共和国の革命家として行動するに至った理由を、人種論に関するフォルスター/カント論争(1786〜1788)を検討することによって、思想的に考察した。その成果は論文「ゲオルク・フォルスター:『人種に関する付言』」 (大阪府立大学紀要、第49巻、2001.3.)に発表する予定である。当該論文は、フォルスターの哲学者カントとの論争が、世界旅行を通じて獲得した自己の経験主義的世界観をマインツ革命時代の行動的思想へと発展させる重要な契機をかいま見せることを、論証する。このカント論争は、カントがヘルダーの歴史方法論的対決において試みた、自然と理性の概念的分離と総合の歴史観をフォルスターに教示した点においても、哲学の「独学者」フォルスターにとって重要な体験となった。しかし、フォルスターはカントの方法を認知しつつも、同時に、カント流の歴史哲学から距離を置く。博物学者、啓蒙主義者フォルスターの革命家フォルスターへの変身の契機がここに求められる。フォルスターは非抑圧者(ここではニグロ)の解放を人類の解放の環の1つとして認識する。以前の旅行体験はフォルスターに、行く先々で出会った住民が「理性」の所有者であることを教えた。カントのように概念を峻別しないフォルスターは、現実を直視し、啓蒙主義を実践の領域に移したのである。フォルスターにおける世界旅行の意味に関する研究は、つぎの課題としたい。
|