2001 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀西欧とコスモポリタンの思想と行動―ゲオルク・フォルスター研究
Project/Area Number |
12610539
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
船越 克己 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (40079108)
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Keywords | ゲオルク・フォルスター / エカテリーナ2世 / ヴォルガ・ドイツ人植民地 / フランス革命 / マインツ共和国 / ジャーナリズム / ドイツ・ジャコバン |
Research Abstract |
18世紀後半のヨーロッパの若干の強国において、われわれは近代社会の確かな始動のメルクマールを認めることができる。たとえばそれはロシアのエカテリーナ2世の啓蒙主義的政策(ヴォルガ流域のドイツ人植民地)であり、イギリスの大航海政策(キャプテン・クックの世界周航)であり、あるいはフランス革命である。博物学者、啓蒙主義者そして革命的民主主義者へと発展したゲオルク・フォルスタースはこうした世界史的事件に直接かかわった唯一のドイツ人、否ヨーロッパ人である。フォルスターが獲得した18世紀ヨーロッパのコスモポリタン的思想の背景を伝記的に探ろうとする試みが論文「ゲオルク・フォルスター(1、2)」(「言語と文化」創刊号、2002.3.)である。本論はフォルスターが父ラインホルト・フォルスターとともに成し遂げたロシア・ヴォルガ流域の調査旅行(1765〜66)ならびに啓蒙主義的知識世界の洗礼を受けたイギリスでの経験(1766〜72、クックの第2回世界周航出発まで)を扱っている。もう1つの研究はドイツ最初の共和国、いわゆるマインツ共和国(1792〜93)に関するものである。フォルスターはマインツ共和国樹立の中心的人物であるが、かれの革命活動の環であるジャーナリスト活動を論文「G.フォルスターと『新マインツ新聞』」(大阪府立大学紀要、第50巻、2002.3.)で考察した。『新マインツ新聞』(第1-38号、1793.1.1.-3.29.)を扱った論文はこれまでなかったが、この新聞はマインツ革命の性格を知るうえで第1級の資料ともいえる。フォルスターをはじめとする多くのマインツ・ジャコバン主義者は、フランス革命の提起する近代市民社会の政治的概念とその実践をマインツ市民に啓蒙しようと努めた。そうしたなかで『新マインツ新聞』は、マインツ革命をめぐる諸状況がヨーロッパ規模の革命と反革命の事件と連動している事実を認識させる、啓発的新聞であることを論じた。
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[Publications] 船越克己: "ゲオルク・フォルスター(1, 2)"大阪府立大学総合科学部言語センター論文集「言語と文化」. 創刊号. 79-92 (2002)
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[Publications] 船越克己: "G.フォルスターと『新マインツ新聞』"大阪府立大学(人文・社会科学). 第50巻. 1-14 (2002)