2000 Fiscal Year Annual Research Report
クロアチアおよびボスニアの中世文献の言語分析からびに南スラヴ語における位置づけ
Project/Area Number |
12610545
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 恵子 京都大学, 大学院・人間環境学研究科, 助教授 (10229726)
|
Keywords | 南スラヴ語 / 教会スラヴ語 / グラゴール文字 / イストラ半島 / クロアチア / ボスニア |
Research Abstract |
今年度は、二つの研究主題を設け、資料の検討を行った。その二つとは(1)南スラヴ世界の北西部において文語文化がどのように形成されたかについて歴史的背景を明らかにする、(2)研究対象地域で書かれた中世文献を一つ取り上げ、その言語分析を行う、というものである。この二つの研究主題を考究するため、これまでにすでに収集してあった資料に加え、国内の大学図書館所蔵資料や、クロアチアの古スラヴ研究所(ザグレブ市)に外国出張し入手した複写資料などを用いた。 第一の主題である南スラヴ語圏北西部の文語成立史については、クロアチアにおけるグラゴール文字文化の成立に焦点をあてた。そして先行研究で明らかにされていることがらを整理しながら、この文化の成立が、9世紀から13世紀にかけてのバルカン半島における東西両キリスト教教会の競合とその勢力の推移という歴史的事情に関わっていることを概観した。第二の主題である具体的な言語分析としては、15世紀にイストラ半島で成立したグラゴール文字文献Istarski razvodを取り上げ、文字、音韻、形態論的特徴を、先行研究によって明らかにされている、その他の南スラヴ文献の言語特徴と比較しながら検討した。そして、15世紀当時の世俗文献は、古い教会スラヴ語の文語伝統と無縁ではないにしても、土着の方言を基盤とした文章語によって書かれており、独自の言語文化を形成していたことを明らかにした。 二つの研究主題は、平成12年度研究報告書(『クロアチア・グラゴール文字文化の成立』『イストラ境界区分の言語』)として冊子体にまとめた。
|