2002 Fiscal Year Annual Research Report
クロアチアおよびボスニアの中世文献の言語分析ならびに南スラブ語圏における位置づけ
Project/Area Number |
12610545
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三谷 惠子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (10229726)
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Keywords | 南スラヴ語 / 教会スラヴ語 / グラゴール文字 / クロアチア / チャ方言 |
Research Abstract |
本研究課題において、研究者は平成12年度にクロアチアのグラゴール文字文化の成立の背景を明らかにし、14世紀に成立したとされるグラゴール文献『イストラ境界区分(Istarski razvod)』の言語分析を行った。平成14年度には、その研究成果をふまえ、さらにこれと同時代、同じ地域で成立した翻訳物語り(ラテン語から訳された教父伝、アイルランド起源の中世物語り『トゥンダイルの幻視』など)のテクストをコンピュータ処理して述語の形式を分析した結果を加え、中世チャ方言の動詞文法範疇について詳しい分析を行った。その結果、テクストにおいて単純過去形(アオリスト、未完了過去)と現在完了形がそれぞれ、語りと直接対話の部分において優勢であること、このことを通時変化の一般的傾向に照合すれば、中世チャ方言においてすでに、現在完了形がとくに話し言葉においては一般的な過去時制の形式で用いられていたと予想することができるという知見を得た。この研究成果は、平成15年8月にスロヴェニアで開催される国際スラヴィスト会議において口頭発表する予定である。 また平成14年度には、同じくグラゴール文字文献で、南スラヴにおいて最も古い成文法の一つとなる『ヴィノドール法(Vinodolski zakon)』を取り上げ、その構文特徴を、おなじ南スラヴ文献で14世紀中期のセルビア王国最盛期に制定された「ドゥシャン法典(Dusanov zakonik』ならびにロシア北部の都市プスコフで14世紀から15世紀に用いられた『プスコフ裁判法(Pskovskaja sudnaja gramota)』のそれと比較し、それぞれの言語の統語論的特徴を検討し比較統語論への試みを提示した。この研究は平成14年10月に開催された日本ロシア文学会研究発表会で口頭発表し、現在、同学会誌に論文を投稿中である。
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