2000 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の類型論的特徴が文の認知処理過程に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
12610558
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
酒井 弘 広島大学, 教育学部, 講師 (50274030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉岡 賀津雄 広島大学, 留学生センター, 助教授 (70227263)
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Keywords | 心理言語学 / 認知心理学 / 文処理 / 日本語 / 類型論 / 袋小路文 / 対照言語学 / 格助詞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、述語が最後に提示される主要部後置型言語であり、格助詞を用いて項と述語との関係を形態的に明示するという日本語の二つの類型論的特徴が、いわゆる袋小路文の認知的処理においてどのような影響を与えているか、実験的手法を用いて明らかにすることである。日本語文処理研究および日本語言語学研究の現状を把握するための資料収集・情報交換をおこなった結果、日本語においても袋小路文の認知的処理が困難であることが実験的に証明されている(Mazuka & Itoh,1995;井上,2000)が、再分析を引き起こす格助詞の種類に注目した研究はいまだに行われていないことが分かった。近年の日本語理論言語学の研究(Saito,1985;Fukui,1986)においては、格助詞「が」は構造的に付与されるため述語との結びつきが薄く、「が」以外の格助詞は述語との意味関係によって決定されるため述語との結びつきが強いと考えられている。そこで、「子犬がミルクを飲んだ男の子をかんだ」のように「が」格名詞句を再分析する必要が生じる袋小路文と、「手帳に電話番号を書いたメモをはさんだ」のように「に」格名詞句を再分析する必要が生じる袋小路文の間では、再分析の困難さに違いがあると考え、仮説を検証するための実験を行った。実験方法は、moving windowsを用いたself-paced readingで、被験者がキーを押すごとに文節が提示され、一文が終わると、提示された文が日本語として適切であるか否かを被験者に判断するよう求めた。語順を変更することで袋小路を解消した文と本研究と関係のないダミー刺激文を加えてランダムに提示し、文節ごとの読文潜時を測定した。実験結果は現在分析中であり、来年度、実験結果にさらに分析・検討を加えて論文にまとめ、学会および学術雑誌において発表することを計画している。
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