2001 Fiscal Year Annual Research Report
樺太アイヌ語の母音の長短と北海道アイヌ語の高さアクセントの史的関係の解明
Project/Area Number |
12610559
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板橋 義三 九州大学, 留学生センター, 助教授 (50212981)
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Keywords | 樺太アイヌ語 / 母音の長短 / 北海道アイヌ語 / 高さアクセント / 母音の長短と高さアクセントの対応 |
Research Abstract |
昨年度は予定してはいなかったことであるが、これまで収集した樺太アイヌ語と北海道アイヌ語のデータと服部(1959、1967)とVovin(1993)の先行研究を基に比較検討を行い、暫定的にその成果を九州大学紀要「言文論究」にまとめた。その中でこれまで問題になっていた樺太アイヌ語の母音の長短と北海道アイヌ語のピッチアクセントの不規則な対応例が多く見つかり、その点に関しては更なる課題とした。 昨年度はアイヌ古老の上田トシさん、木村イトさんにお願いし、ウェペケレ、ウポポ、ユーカラを直接ビデオ収録したが、実際テープ起しをしてみて、高さアクセントは本来のアイヌ語というより彼女らの母語である日本語の影響を多大に受けているように見られた。従って、その可能性をできるだけ排除するために、今年度は北海道のフィールドワークは行わず、それに代わるものとしてこれまでに既に刊行されているものとまだ刊行されていないが使用可能な資料をできる限り収集し、それを基に分析を行うことにした。 現在音声資料の分析を行っている最中であるが、大部分は従来の諸説のように樺太アイヌ語と北海道アイヌ語の対応があることが暫定的にわかるが、さらにそれを今年度収集した他の多くの音声資料からも裏書きできる。しかし、果たしてどの程度まで規則化が可能かは現段階では明確ではなく、従来の諸説(服部、Vovin)と異なる可能性も出てきている。 実際に今年度収集したものは既に今年まで刊行されている音声資料、そして以前に刊行されているが、現在は手に入らない音声資料をできるだけ収集した。この収集のために北海道大学、北海学園大学、千葉大学、早稲田大学等に赴き、できるだけ多くの樺太アイヌ語と北海道アイヌ語の音声資料を入手した。しかしながら、これでもまだ不十分なので、その補強は来年度に譲る。
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