2002 Fiscal Year Annual Research Report
四国方言の京阪式アクセントと無声化の関係に関する研究
Project/Area Number |
12610563
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Research Institution | KOKUGAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
久野 マリ子 國學院大學, 文学部, 教授 (90170018)
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Keywords | 香川方言 / 類の統合 / 無声化 / 促音化 / 高知方言 / 相生方言 / 有声子音の前の無声化 / 拍内下降 |
Research Abstract |
1.アクセント体系と類の統合 四国方言の香川県大川町では、2拍名詞が、1.3/2/4/5の統合をしている。しかし、2類の語は2拍目が広母音の場合、第2拍の中で下降が認められる。観音寺市では、1/2/3/4/5の対立が認められる。善通寺市では1・3/2/4/5であるが、音環境による拍内の下降は認められない。 高知方言では、1/2・3/4/5であるが、若年層では4・5類が尾高下型になりつつある関西中央圏と同じ傾向が見られるが、これは京都や大阪などでと同時進行的に起きている現象であり、関西弁が高知方言に影響を及ぼした結果であるとは考えにくい。これは、新たな研究課題として取り組む必要がある。 比戟のため、調査した相生市方言におけるアクセント体系は、高知に似た京阪式体系で垂井式アクセントである。老年層においては伝統的に2拍名詞が1/2・3/4/5で、4・5類の対立は保たれているが、語によっては第5類への移行も認められた。若年層では4・5類が合流する傾向があり、その点では関西中央圏と同じであるが、京都や大阪などでは4・5類が尾高下型になりつつあるのに対して相生市方言では頭高型になる点で異なる。 2.母音の無声化と促音化について 高知方言では、母音の無声化については老年層では少ないが、若年層では次第に無声化する傾向が認められた。高知のほうが相生より無声化する傾向が少ないが、アクセントの山が来ない無声子音間の狭母音が広母音拍の前で無声化するという傾向がある。 また、香川県方言の若年層話者の音声を音響分析し、無声化の傾向を調べた。香川方言では老年層でも無声化の傾向があり、高知方言とは異なる。無声子音に挟まれた狭母音は、香川の若年層はほとんど安定的に無声化する。また、アクセントの山が来る場合や広母音でも無声化することがあるということがわかった。 また、無声化の代わりに促音化を起こすことが多く、これは香川方言、相生方言で認められるが、高知方言では認められ無かった。 これらの成果の一部をイタリア日本語教師研修会(ベネツィア大学)において発表した。
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