2001 Fiscal Year Annual Research Report
ラフカディオ・ハーンのジョセフ・テューニソン宛書簡をめぐる伝記的研究
Project/Area Number |
12610578
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Research Institution | College of International Relations, Nihon University |
Principal Investigator |
梅本 順子 日本大学, 国際関係学部, 教授 (40180799)
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Keywords | ラフカディオ・ハーン / ジョセフ・テューニソン / ヘンリー・クレービール / アレクサンダー・ヒル / エリザベス・ビスランド / ジョージ・グールド / ヘンリー・ワトキン |
Research Abstract |
いままでハーンの書簡集には収録されなかった、武蔵大学所蔵の書簡(ラフカディオ・ハーン、およびジョセフ・テューニソン他のハーンの友人たちの間で交わされた書簡)を整理し、ハーンの死後おきた、ハーンの伝記執筆を巡る争いの実態を明らかにすることを主題とした。 報告書にもまとめたが、I部では、ハーンの公式伝記執筆の権利を巡る争いとして、公式の伝記とされたエリザベス・ビスランドの『生涯と書簡』(1906)の出版直後に出された、ヘンリー・ワトキンの『鴉からの手紙』(1907)やジョージ・グールドの『ラフカディオ・ハーンについて』(1908)の内容を、『生涯と書簡』と比較し、その成立の背景をテューニソンならびにヘンリー・クレービールの視点から眺めた。 また、II部ではI部で取り扱われた書簡の差出人である、テューニソン他のハーンの友人たちのプロフィールを取り扱った。テューニソンをはじめとして、地方紙の記者としてあるいは文筆家として名をなしたものもあるが、これまでのハーン研究の中では、取り立てて言及されることが少なかった人物である。しかし、ハーン評価に関わるハーン伝の執筆に関して、これらの人々はそれぞれの立場から深く関わったといえる。この友人、知人たちの動きをたどることにより、ハーンの足跡を再検証するのが本研究の目的となった。 最後のIII部では、最初に述べた書簡を人物ごとに整理し、それぞれの視点から問題を取り扱うことをねらった。特に、シンシナティの出版界に君臨した、アレクサンダー・ヒルに宛てたテューニソンの書簡は、一連の事件の全容を明らかにしてくれる。ビスランドやグールドなどもヒルとは文通していることから、ハーンとの直接交渉はなかったにしろ、ヒルは死後のハーン評価に関わったと考えられよう。残念なことにヒルからの返信は残っていないが、現存している書簡、および原稿の類は、ヒルのもとに、テューニソンやクレービールらが預けたものと考えられることからしても、ハーン研究には貴重な資料と考えられよう。また、ハーンの友人たちがヒルを信頼して本音で語っている書簡も多々あるため、ハーンを中心にしての人間模様が明らかになるのである。こういう意味からも、これらの書簡、ならびに原稿を人物ごと、かつ時代や事件を追いながら整理した。
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Research Products
(1 results)