2000 Fiscal Year Annual Research Report
溜池の権利関係についての法社会学的研究-広島県東広島市を事例にして-
Project/Area Number |
12620005
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 護也 広島大学, 総合科学部, 教授 (80034594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富井 利安 広島大学, 総合科学部, 教授 (40006466)
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Keywords | 溜池 / 水利権 / 環境用水 |
Research Abstract |
1 本研究の対象地域である東広島市は、広島県中央部賀茂台地に位置する。ほとんど分水嶺にあって、大きな河川の存在しない、水利は溜池に依存する地域であること、また、溜池の多い瀬戸内海沿岸地域にあっても、とりわけその数の多い全国でも有数の溜池地帯であることを確認した。社会経済的には、地域一帯は、学園都市開発や宅地開発、工業団地造・流通団地造成などの地域開発、テクノポリス開発、空港建設など都市化現象の著しい地域であることを確認した。 2 本研究は、この東広島市を事例に、水利・地域環境をめぐる近年の状況変化を背景にして、溜め池の所有・管理・利用の権利関係や溜池の社会経済的機能にどのような変貌が見られるのか、その変貌の一端を解明することを目的としている。平成12年度では、東広島市役所農村整備課から「溜池台帳」(2、349件)の関連項目の提供を受け、電算による集計分析を行っている。その結果現在のところ次のような知見を得ている。(1)溜め池の潰廃状況について、地域開発と農地の非農地化に見合って「受益消失の放置」はかなり見られるが、「廃止」はほとんどない。(2)溜池の権利関係に関して、水利施設への関わり方を反映して所有と管理、管理と利用との間にかなりの分化傾向が見られ、水利権の性格・内容に大きな変化が生じているものと見られる。(3)登記名義については、単なる「共有地」とするものが多いのがこの地域の特徴のようである。 3 溜池の多面的機能の検討も本研究の重要テーマであるが、この地域にあっても、溜池は地域環境用水の様相を帯びている。利水、治水のみならず環境用水の性格を強めている事例が見られる。農業者、非農業者の共同の環境保全活動が見られるのであって、これが今後、水利権の性格、したがって水利権理論にどのような変容を与えていくのか(あるいは与えていかないのか)、きわめて注目される。
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