2000 Fiscal Year Annual Research Report
現代国家における先住権の具体的実現-アイヌとハワイ先住民の比較的実証的研究
Project/Area Number |
12620018
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
常本 照樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10163859)
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Keywords | 先住民族 / ハワイ先住民 / アイヌ民族 / 先住権 |
Research Abstract |
合衆国最高裁判所は、2000年2月にRice v.Cayetano事件に関する判決を下し、ハワイ州先住民局(OHA)の理事選挙の有権者をハワイ先住民に限定する州法を、選挙権の平等を定める合衆国憲法第15修正違反と判示した。ハワイ州政府は、これに対応して、非先住民にも選挙権・被選挙権を認める法改正を行った。さらに、最高裁判決以降、OHAの存在および先住民のみを対象とする各種施策の合憲性を争う訴訟が提起されている。 平成12年度の研究においては、まず第一にRice判決の多角的検討を行い、その判旨の射程について吟味した。その結果、判決は形式的には第15修正の問題に限定しているが、その実質は容易に第14修正の平等保護一般に敷衍できるものであることが判明した。実際、Rice判決の後で下されたハワイ管轄連邦地裁の判決は、このような理解に基づいてOHA理事の被選挙権を先住民に限定する州法を第14修正違反と判決している(Arakaki v.Hawaii)。なお、Rice判決研究の成果の一部は、日米法学会機関誌『アメリカ法』に掲載した。 さらに、海外共同研究者であるハワイ大学のMark Levin助教授の協力を得て、現地調査を行い、OHAおよび先住民のHomestead landを視察したほか、ハワイ大学の研究者(Van Dyke教授、Eric Yamamoto教授、Chris Iijima助教授ら)との意見交換および先住民運動のリーダーや弁護士らのインタビューを実施した。これらによって、Rice判決の余波は広汎に及んでいること、OHAの存在自体に悲観的な意見が少なくないこと、立法的解決の必要性が高いこと、先住民の中にも多様な意見があること、などが明らかになった。これによって得られた知見に基づき、アイヌ民族との比較という意味でも、とりわけ立法的解決の可能性について今後一層の研究が必要であると考えられた。なお、ハワイ先住民の現状については、北海道ウタリ協会札幌支部主催のシンポジウムにおいて報告する機会を得た。
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Research Products
(2 results)