2001 Fiscal Year Annual Research Report
ホームレスの人々の「自立支援」及び権利保障に関する比較憲法学的研究
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12620022
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹沼 弘志 静岡大学, 教育学部, 助教授 (70283322)
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Keywords | ホームレス / 自立支援 / 生活保護 / 社会的排除 / 人権 / 公的扶助 / 日本国憲法 / 比較憲法 |
Research Abstract |
本年度は昨年度から引き続き、日本におけるホームレスに対する権利保障の在り方、とりわけ生活保護行政の運用に関する研究を継続して行うとともに、わが国における新たなホームレス支援法制定へ向けた動向に関する研究にとりくんだ。さらに今年度はアメリカ合衆国における研究調査も行いながら、同国におけるホームレス支援法とその後のホームレス政策とりわけ反ホームレス法令の展開について研究を行った。 アメリカ合衆国においては、80年代末、マッキニー・ホームレス支援法制定後、ホームレスの人々に対するシェルターによる保護等が積極的に展開されてきたが、その一方で90年代から公園や路上における「浮浪」行為や物乞い行為、などを禁止する反ホームレス法の制定が相次いだ。それとともに訴訟も多く行われてきた。ホームレスの人々に対する収容と排除政策が合衆国におけるホームレスの政策の主流となりつつある。その収容と排除政策を最も積極的に行っているニューヨーク市における現地調査も行い、ホームレスの「犯罪化」といわれるホームレス政策の実態を明らかにした。 日本における新たなホームレス支援法案はアメリカのホームレス支援法にならったものである。と同時に、各自治体からホームレス排除に関する条項を設けよとの要求も行われている。だが、日本にはアメリカのように豊富かつ充実したシェルター、スープキッチンなどのホームレス支援事業が展開していない。こうした事情を考慮に入れると、日本におけるホームレス支援法制はアメリカ以上に排除に比重を置いたものとなる危険性も十二分にある。日米の比較憲法的研究は、日本のホームレス法をホームレスの人々に対する社会的排除を進めるだけのものにしないためにも大きな意義を有している。
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Research Products
(2 results)