2000 Fiscal Year Annual Research Report
「1999年(内閣・国家科政組織・地方分権)改革」の研究
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12620029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲葉 馨 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10125502)
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Keywords | 行政改革 / 内閣機能 / 中央省庁再編 / 地方分権 / 国・地方係争処理制度 / 住民参加 / 関与法制 / 国家行政組織 |
Research Abstract |
まず、1999年改革のうち、地方分権改革については、新たに導入された国・自治体間紛争処理制度(新設の国地方係争処理委員会の組織・権限等を含む)を中心に検討した。自治体に対する国の「関与」について両者間に紛争が生じたとき、「公平・中立」な第三者的紛争処理(行政)機関および裁判所の審理・判断を通じて当該紛争を解決するシステムの創設は、国・自治体間の「上下・主従」関係から「対等・協力」の関係への転換を理念とする今次の地方分権改革を象徴するものである。しかし、国地方係争処理委員会が、(中央省庁再編後)内閣総理大臣を長とする内閣府ではなく、総務省に置かれること、審査申出・出訴はもっぱら自治体側から行うこととされて、国の関与に優先的な効果を認めるような仕組みになっていること、行政主体間の紛争でありながら、通常の機関訴訟として構築されていること等、なお見直しの余地を残すものとなっている。 次に、1999年改革後の重要課題である住民自治の拡充との関係で、ドイツ各州における住民(市民)投票制度の整備状況を調査した。90年代において急速に拡大していった市民投票制度の立法化は、97年のザールラントをもって、ドイツ全土に及ぶこととなった。現在は、その拡充・見直しの時期に入っており、引き続き、各州の改正状況を丹念にフォローしていく必要がある。 さらに、内閣・国家行政組織改革についても、考察を加えた。内閣と各省との関係を理解する際に、後者の前者に対する「補佐」関係を重視することによって、各省間の「壁」を低くする試みを行ったほか、内閣府の複雑性を明らかにし、また、内閣総理大臣・内閣府・総務省・人事院に関わる「中央人事行政機関」の問題についても検討した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 稲葉馨: "国・自治体間の紛争処理制度"都市問題. 91巻4号. 29-39 (2000)
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[Publications] 稲葉馨: "「行政」の任務・機能と国家行政組織改革"公法研究. 62号. 31-52 (2000)
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[Publications] 稲葉馨: "中央人事行政機関論"自治総研. 264号. 1-19 (2000)
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[Publications] 稲葉馨: "ドイツにおける市民投票制度の特色"住民投票が拓く自治-自治総研ブックレット69. 69号. 34-50 (2001)
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[Publications] 稲葉馨: "成田=園部=金子=塩野 編『全訂・注釈地方自治法』"第一法規出版(執筆担当分). 169 (2000)