2000 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害を持つ人のための代諾及び意思決定支援制度に関する研究
Project/Area Number |
12620030
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
初谷 良彦 北陸大学, 法学部, 教授 (20208531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 健 群馬大学, 教育学部, 助教授 (20173552)
三谷 嘉明 北陸大学, 法学部, 教授 (80014760)
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Keywords | 知的障害 / 意思決定 / 意思決定能力 / インコンピテンス / 代諾 / インフォームド・コンセント / 自己決定 |
Research Abstract |
平成11年に公布された成年後見制度等関連四法により,平成12年度からはこれまでの禁治産制度が補助・保佐・後見の三類型の制度に改められた。この制度は主に高齢者の権利擁護の立場から発想されており,基本的には意思決定能力(コンピテンス)のある成人の自己決定を尊重することに主眼が置かれている。本研究では,まず近年急速な高齢化が進む成人知的障害者に対する制度の適用可能性を探った。その結果,成人知的障害福祉施設におけるヒアリング調査から,軽度知的障害の場合,十分な説明の下で財産管理や身上管理についてのインフォームド・コンセントが可能であり,成年後見制度の適用範囲にあることが示唆された。しかし,問題点として,現状ではインフォームド・コンセントのための意思決定能力判定基準が明確に定められていないため,どの領域でどの程度まで自己決定を尊重すべきか,恣意的な判断が下されがちであることが指摘された。そこで,文献研究に基づき,意思決定能力判定基準の試案作りを試みた。また,中・重度の知的障害の場合,実際の意思決定は成年後見制度が成立しても従来とあまり変化しないことも示唆された。障害者が意思決定能力欠如(インコンピテンス)と判定された場合の代諾の在り方は基本的にパターナリズムの原理によらざるをえない。本研究のヒアリング調査では身上管理等の問題に関して親権者による代諾が障害者自身の利益に反するように思われる事例が見出された。そこで,具体的な事例に基づき現状の問題点の解明を試みたが,知的障害者の権利擁護の立場から代諾の法理的基盤を再検討する必要があると考えられる。この点は,次年度の大きな課題として残された問題である。
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