2002 Fiscal Year Annual Research Report
財産権法定主義と戦争犠牲者補償―ドイツと日本の比較研究
Project/Area Number |
12620031
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 茂樹 立命館大学, 法学部, 教授 (10107360)
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Keywords | 財産権 / 戦後補償 / 日本国憲法29条 / 精度保障 / 戦争損害受忍義務論 |
Research Abstract |
本テーマについて当初設定した検討の柱は、(1)いわゆる連邦補償法を中心としたドイツの補償制度、(2)わが国の一連の「戦後補償裁判」をめぐる動向、(3)ドイツにおける財産権保障理論、なかんずく連邦憲法裁判所の判例理論の動向、(4)日本国憲法29条の財産権保障条項をめぐる判例および学説の動向、の4つであった。 本年度には、とくに、(2)の「戦後補償裁判」とかかわって、戦後補償立法の憲法上の根拠と戦争損害受忍義務論を詳細に検討し、さらに、(3)のドイツにおける財産権保障理論にかかわっては、ドイツ陣邦憲法裁判所とその財産権理論の形成に指導的役割を果たしたWerner Boehmerの財産権論に即しながら、ボン基本法における財産権保障の性格、補償の保障としての財産権の価値補償、人格的自由と内面的関連をもつ財産権、ヴァイマル憲法下の制度保障観念と連邦憲法裁判所の制度保障観念、社会的拘束と収用との関係、などの論点についてその特徴を明らかにすることができた。そして、このドイツの財産権保障理論とのかかわりで、(4)の日本国憲法29条の財産権保障条項にかかわっては、一方での、29条1項における財産権の立法その他の国家権力の侵害に対する保障と、他方での、2項における立法者による財産権の内容の規律という、いわば財産権の「矛盾的構造」、そのような構造のなかで果たす制度保障観念の役割、財産配分をめぐる国家の社会的・経済的の変容、29条3項の生命・身体に対する侵害への適用、29条3項の直接適用、などの論点について、その問題点を明らかにすることができた。
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