2002 Fiscal Year Annual Research Report
金融取引のグローバル化に対応した法制度設計の基本原理に関する研究
Project/Area Number |
12620036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 美明 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 教授 (20144420)
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Keywords | 取引法 / 規則法 / 国際私法 / 承認原則 / 証券化 / 遺産 / 銀行預金 / 国際相続 |
Research Abstract |
この研究は、グローバルな金融取引を安全かつ効率的に行うためには、どのような法的インフラをどのように整備すべきかについて、制度設計のための基本原理を明らかにすることを目的としている。 平成13年度は、第1に規制法による対応について、EUで国際私法上の本国法主義と同様の原則が確立しつつあることを明らかにした。第2にとりわけ越境的消費者問題について、国際私法における消費者保護ルールの提案を行った。 平成14年度は、第1の規制法に関する本国法主義類似の原則をさらに分析し、EUではこれが本国の規制・監督を受け入れ国が承認するという意味で承認原則(principle of recognition)と呼ばれていることを明らかにした。さらに、金融分野におげる承認原則は、外国国家機関の個別の行為、たとえば外国判決の承認制度とは異なり、外国制度の包括的な承認であることがわかった。 第2に、私法的対応として、平成12年度の成果をさらに発展させ、後掲論文「債権流動化と国際私法-立法試案」において、国際的な証券化取引には現行法例12条では対応できないので、新しい国際私法規則を設けるべきだとの提案を行った。具体的には、現行の債務者住所地法主義は債務者保護に限定することとし、その他の第三者に対する対抗要件・優先順位の問題には、債権者住所地法主義を採用すべきことを主張している。 第3に、私法的対応として相続法に目を向けると、現行の国際裁判管轄ルールおよび国際私法理論は日本在住の外国人の資産問題を解決することを主目的として発展してきたため、日本人の国境を越えた資産保持には充分対応できないことがわかった。この観点から、後掲論文「外国にある日本人の遺産処理-外国の銀行預金-」では、むしろ被相続人の国籍所属国(日本)の規律や相続人の住所地としての日本の利益を重視して理論を立てるべきことを主張した。
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