2000 Fiscal Year Annual Research Report
市場のグローバル化に伴う主権機能の変質と日本の労働力再生産過程における公益確保
Project/Area Number |
12620039
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
太田 育子 広島市立大学, 国際学部, 助教授 (10211103)
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Keywords | グローバリゼーション / 日本 / 福祉国家政策 / ジェンダー / 資本主義的家父長制 / 家事労働 / アンペイド・ワーク / 商品化 |
Research Abstract |
本研究においては、M.ミース等の理解に基づき、グローバリゼーションを、地球規模の自由貿易を主軸とする資本蓄積の理論・実行が、地球上のあらゆる地域および生活のあらゆる領域へと、かつてないほど浸透しつつあること、と捉える。この過程で生じる資本主義経済の地球規模での再編により、いまや先進諸国においても、鉄鋼・造船など製造業部門では、男性の完全雇用すら確保できない。しかし、このような経済成長ないし資本蓄積は、無償ないしわずかなコストで搾取することが可能な「植民地」(自然環境や、家事・出産・育児・介護などの女性による無償労働など、「コストの外部化」のための領域)がある限りにおいて継続可能である。そしてvernacularな価値・行為(人々が日常の必要を満足させるような自律的で非市場的な価値・行為)はuniversal commodification(人間のあらゆる行為の商品化)の潮流の下になし崩しにされようとしている。 したがって、日本という具体的な国家の福祉政策のパラダイム転換(1995年7月の社会保障制度審議会勧告『社会保障体制の再構築』)に際し、女性の無償労働問題を検討する場合にも、(1)地球規模の資本主義的家父長制のなかでの位置づけ、および(2)無償労働を有償化(商品化)することに伴う問題群の把握、が必要となろう。研究初年度の本年度末にStanford Law Schoolに赴き、M.ラディン教授と協議のうえ、上記のような検討視座で、来年度以降、Reconstructing Care-Work in Japan : Family, Gender, and Welfare Policy in the Age of Universal Commodificationという題目の下、研究および英文での執筆を継続することとなった。
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Research Products
(1 results)