2003 Fiscal Year Annual Research Report
市場のグローバル化に伴う主権機能の変質と日本の労働力再生産過程における公益確保
Project/Area Number |
12620039
|
Research Institution | Hiroshima City Unviersity |
Principal Investigator |
太田 育子 広島市立大学, 国際学部, 助教授 (10211103)
|
Keywords | グローバリゼーション / 日本 / 福祉国家政策 / ジェンダー / ケア労働 / 商品化 / 関係性 / セルフ・エスティーム |
Research Abstract |
研究初年度(平成12年度)の研究成果から、日本の福祉政策のパラダイム転換(1995年7月の社会保障制度審議会勧告『社会保障体制の再構築』)を経た現在、「市場のグローバル化」における女性の無償労働問題を検討する場合には、(1)地球規模の資本主義的家父長制のなかでの位置づけ、および(2)無償労働を有償化(商品化)することに伴う問題群の把握、が必要であることを明らかにすることができ、研究第2年度(平成13年度)は、,主に上記(1)に取り組んだ。研究第3年度にあたる平成14年度は、主に上記(2)に関して、特に、労働力再生産過程における世代間・世代内の公平性(単に資源の平等な配分状態を表すのではなく、たとえ不平等な配分であったとしてもそれを正当なものとして受け入れること)をいかに確立できるかについて、「育児期」と「高齢期」という基本的な2つの社会リスク(自力で生計を立てられなくなる状態)のうち、前者に重点を置いて検討した。 これらの成果に基づき最終年度では、育児や介護を、Winicottのいう人間の発達過程における最初期(乳幼児)と最後期(寝たきり老人)の「ある」(=依存する/ケアされる)存在に対する、中間期の「する」(=依存される/ケアする)存在による、両者の関係性のうえに成り立つ労働とみなすべきこと、加えて、三好春樹のとらえるように、ひとりの人間は、自分自身との関係性、家族(あるいは情愛の対象)との関係性、社会との関係性という3種類の関係性を同時に生きる存在であり、この観点に立てば、「労働者」とは、それら3種類の関係性すべてを、「労働」という行為を通じて満たしていく存在ととらえるべきこと、に着目し、Minowの「関係性の権利」論やCornellの「イマジナリーな領域への権利」論をも踏まえて、自身との関係性=セルフ・エスティームを人権の基礎に置き、「労働者の権利」と「子どもの権利」に関する論考をまとめ、それらの一部を英訳した。
|
Research Products
(2 results)