2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620042
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 正則 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70190105)
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Keywords | 高齢化社会 / 先取りした相続 / 遺産承継 / 予防法学 / 遺留分放棄 / 目的不到達の不当利得 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高齢化社会を前提とする、社会保障ではなく自己の資産を活用した、自己の財産の生前処分・死因処分を通じた生活保障・遺産承継の法的手段の研究である。その際のアプローチの方向は、まず信託という制度を知らないドイツ法の検討を通じた比較法的な研究及びわが国の実態に応じた予防法学的研究である。本年度(平成12年度)の計画は、まずドイツ法の特に先取りした相続に関する法技術的な問題点を明らかにし、その上で札幌を中心とした地域でアンケート等の調査を実施する予定であった。しかし、結論として、前者では一定の成果が得られたが、後者では今だそうではないという状態である。前者に関しては、先取りした相続(vorweggenommene Erbfolge)を構成する、様々な法制度に関しての検討を行った。具体的には、目的不到達の不当利得・行為基礎の喪失及び遺留分の放棄である。さらに、以上との関連で、小規模の企業の承継つまり生活保障・遺産承継とが一体になっている相続の形態、加えて農家相続についても一定の成果が得られた。前者については、本年度に出版予定である「不当利得法(信山社)」(法律学の森3・単著)の中で、その成果の一部を公表予定である。後者については、できれば本年度に個別の論文の形で、成果を明らかにしたいと考えている。しかし、実態調査に関しては、札幌周辺で幾つかの銀行・公証人・弁護士事務所に照会したが、予防法学的な観点から相続に関する、特に遺産承継という視点から体系的なアドバイスを行ったり、契約書の作成を行っているという例は発見できなかった。それゆえ、本年度は方向性を変えて調査するか、実態だけに焦点を合わせるのかを検討している。
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